世界で一番長い旅客機

 

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 この夏、世界の2大旅客機メーカー、エアバス社とボーイング社はA380巨人機とソニック・クルーザー高速機という二た手に別れて別々の道を歩きはじめた。大型機か高速機かという両社の論争は長年にわたってつづいてきたが、いよいよ勝負をかけた動きがはじまったのである。

 航空界の長期的な見方の違いから、エアバス社は今後も現行のような長距離幹線を中心とする需要が増大する。だからといって無闇に飛行便数を増やすわけにはいかないという見方から、超巨人機の開発に踏み切った。対するボーイング社は幹線容量が限界に達した今、次はハブ空港を避けて各地点と地点を直接結ぶ長距離路線が増えると見て高速機の開発に乗り出した。結果として、ボーイング社の747Xや767-400ERX計画は静かに消えて行った。

 そうしたA380とソニック・クルーザーの本当の勝負はこれからだが、その前哨戦としてA340と777Xの競り合いがある。どちらも新しい発達型の開発が進んでいるが、たとえばA340-500は旅客313人をのせて15,000kmを飛ぶのに対し777-200LRは301人をのせて16,000kmを飛ぶ。またA640-600が380人乗りで14,000km近い航続性能を持つのに対し、777-300ERは365人乗りで航続13,000km以上になる。

 詳しくは下の比較表の通りだが、この中で今飛んでいるのはA340-600のみ。それも今年4月に初飛行したばかりで、早くもパリ航空ショーに姿を見せた。

 欧州エアバスA340-600は世界最長の旅客機である。本頁では先に世界最大の輸送機ムリアをご紹介したが、こちらは最も長い胴体をもつ。

 原型A340四発機は1991年10月に初飛行した。量産型A340-200の就航は93年3月。エールフランスとルフトハンザ航空の定期路線である。96年4月には、一回り大きなA340-300もシンガポール航空の定期路線に就航した。

 A340-500/600の開発がはじまったのは1997年12月。長距離用のー500は標準座席配置で313人乗り、より大きな-600は380人乗りである。

 その機内は、どの客席からも通路へ出るのに2席以上をまたぐ必要はなく、また隣席との肘掛け争いをする必要もない。床下の貨物搭載量は60トンにもなり、旅客機としては747の2倍。エンジンはRRトレント500(推力25,400kg)。巡航速度はマッハ0.83。操縦装置はフライ・バイ・ワイヤー。これまでの受注数はエアライン11社から124機に達する。


(長い胴体の窓の下には
「より長く、より大きく、より遠く、より速く、より高く、より静か、より滑らか」
という長いキャッチフレーズが書いてある)

 A340-600は今年4月23日に初飛行した。それから2か月も経たずにパリ航空ショーに登場した。そしてショーの期間中に2号機も飛んだというニュースが伝えられた。3号機も間もなく飛ぶ予定である。

 これらの原型3機は合わせて1,600時間の試験飛行を経て型式証明を取り、量産1号機は2002年なかば英ヴァージン・アトランティック航空へ引渡される予定。一方の超長距離型A340-500は今年11月に初飛行し、1年後に就航する。 


(長すぎて、すぐにカメラからはみ出す)

ボーイング対エアバスの競合機比較表

ボーイング

エアバス

777-200LR

777-300ER

A340-500

A340-600

全長(m)

63.7

73.9

67.9

75.3

最大離陸重量(トン)

322

317

365

365

標準客席数

301

365

313

380

航続距離(km)

16,405

13,330

15,750

13,900

初飛行年月日

2003年

2002年12月

2001年11月

2001年4月23日

型式証明取得予定

2004年

2003年8月

2002年末

2002年なかば

 (西川渉、2001.9.6)

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