消防飛行艇CL-415

 

 カナダのモントリオールでボンバーディア社が生産中のカナディアCL-415飛行艇は、開発着手からほぼ10年、今年6月のパリ航空ショーの時点で55機の注文を受け、54機が引渡しずみであった。

 同機の重要な任務は消防活動である。そのためカナダ国内ではケベック、オンタリオの両州政府が購入し、欧州ではクロアチア、ギリシア、イタリアなどへ売れた。特にフランスは1997年5月までに12機を輸入したが、パリ・ショーではそのうちの1機が展示された。


(黄色と赤のよく目立つ胴体側面には SECURITE CIVILE 防災局と書いてある)

 カナディア415スーパースクーパー双発ターボプロップ飛行艇は、ピストン・エンジン2基を装備するCL-215飛行艇にはじまり、エンジンをターボプロップに換装したCL-215Tを経て完成した。それまでCL-215を使っていたフランス政府がこのターボプロップ飛行艇を発注したことから、1991年10月16日、正式に開発着手となった。翌92年8月にはカナダのケベック州政府も発注した。

 初飛行は1993年12月6日。翌94年6月24日にカナダ運輸省の型式証明を取った。現在は消防機や捜索救難機として使われている。機体価格は約25億円。最近までの受注内容は次表のとおりである。

   

確定受注数

仮受注数

カナダ・オンタリオ州

――

カナダ・ケベック州

――

クロアチア

フランス防災局

12

――

ギリシア

10

イタリア

13

――

合   計

55

  CL415のエンジンはPW123AFターボプロップ(2,380shp)が2基。乗員は通常2人だが、捜索救難任務のときは3人目が乗る。キャビンには落下傘兵14名、または消防タンクと消防隊員11人をのせることができる。

 消防用の水タンクは機内中央部の重心位置付近に取りつけてある。全部で4個に分かれ、総計6,137リッターの容量がある。つまり6トンの水を搭載するわけだが、この大量の水をCL415は水面を滑走しながら油圧作動のスクープですくい上げる。

 水の取り入れ口は胴体後方の下面にあり、その大きさは高さ23センチ、横25センチという小さなものだが、水面411mを60〜70ktで滑走し、12秒間で満タンになる。開水面がせまいときは少しずつ水をすくうこともできる。水の深さは最小限1.40mまで可能である。

 陸地では胴体両側にホースを取りつけて水を注入する。


(胴体後部下面にある水の取り入れ口――非常に小さい)

 6トンの水を搭載したCL415は、胴体下面の4枚のドアを開けて水を投下する。機内には消火剤680kgも搭載可能で、これを水に混ぜて散布することもできる。

 典型的な消火活動は、火災現場と水源とが11km離れたところにある場合、CL-415は3時間にわたって飛びつづけ、1時間に9往復し、54トンの水を火炎に向かって投下することができる。

 また水の代わりに薬剤を搭載して、農薬散布や流出油の対策に使うこともできる。さらにギリシアなどは洋上の捜索救難機として使っている。


(胴体下面左側の水投下口。同じものが右側にもあり、
4枚のドアを別々に開いて水の投下量を調節することも可能)

 最大離陸重量は陸上では19,958kg、水上では17,236kg。最大巡航速度は376km/h。


(胴体下面4つのドアからいっせいに放水)

 CL-425の最近の生産数は年間6機程度。

 

(西川渉、2001.9.7)

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