箒(ほうき)を取れ 

 

 女外務大臣の存在があやしくなってきた。戦争ともなれば、やはり女より男の出番ということなのだろうか。首相が外国へ派遣する特使も元外相だったり、外務委員会で女外相をいじめた男だったりして、本来なら自ら世界中を飛んで歩き、各国首脳と話をつけるべき役割が影の薄いものになり果てた。

 それというのも、先日は米国の機密を口外した上に「実害はなかった」などと弁解したと思ったら、国会では予告のない質問をされて答えに窮し、あわてて外務職員のメモを棒読みしたり、この次まで待ってくれと言って、みんなに「こりゃいかん」と思わせたからである。すっかりお里が知れてしまった。

 外務ならぬ外部にいて「変人」だの「お陀仏」だのと野次を飛ばしているのがせいぜいの役柄だったのであろう。自分で責任ある立場に立って人を動かし、組織を引っ張って行く能力はもともとなかったのである。

 そんな人を、知らなかったとはいえ、総理大臣になどと考えたのは浅はかだった。せめて掃除大臣かと思ったが、「掃除の小母さんだ」と言った人がいる。そういえば米国の9.11多発テロ以来、外務省の不祥事は忘れられたようになってしまった。

 そのうえ狂牛病問題で、今度は農林水産省が槍玉にあがり、外務の連中は内心「しめしめ」と思っているにちがいない。けれども、あの出鱈目ぶり、上から下まで贅沢三昧、組織ぐるみで公金横領に精を出していた20年間の始末はつけてもらわにゃならぬ。

 農林省の狂牛病や厚生省の薬害問題は何もしなかったことが問われているのだが、外務省は積極的に盗みを働いたのである。その盗人連中が未だに平然として、ヒゲを生やしたまま役所や国会に出入りしているところがよく分からない。警察はなぜ早く泥棒をつかまえないのか。警察もまた同じような泥まみれだから、つかまえに行くのがはばかられるのかもしれないが。

 とすれば、あとは掃除の小母さんにきれいにして貰うほかはない。アメリカの大統領は盛んに「銃を取れ」と叫ぶが、野蛮な戦争は野郎どもにまかせておいて、小母さんには是非ともここで、外務省の塵芥(ちり・あくた)を片づけて貰いたい。

 くどいようだが、掃除だからといって、ただ掃き出すだけでは不充分。ちゃんとちりとりに捕って、ごみために集め、ばい菌が残らぬように焼却する必要がある。

 「掃除人よ、箒を取れ」

(害無笑、2001.10.7) 

 

「小言篇」目次へ

航空の現代表紙へ