<野次馬之介>

救急飛行ジョーク




 
    ドクターヘリが若い女性の患者を病院に搬送してきた。その夫もヘリコプターに同乗してきたが、
救急治療室の外で待つように言われ、廊下の椅子に腰をおろしていると、ドクターが矢継ぎ早に看護師に指示している声が聞こえてきた。
 ドクターの指示は「ナイフ」から始まって「ドライバー」と続き、さらに「プライヤー」という声が聞こえた。そして、ついに「ハンマー、大きい方」と聞いたとき、夫は心配のあまり治療室に飛びこんで金切り声をあげた。「先生、妻の具合はそんなに悪いんですか」
「まだ分かりません」とドクターが答えた。「さっきから治療器具のキャビネットが開かないんです」
 
 

「治療費が安いんだから患者さんにも働いてもらわなきゃ」
 
 
    一人の男がドクターヘリで病院へ搬送されてきた。「ここを抑えると痛いんです」といって、右の脇腹を抑えた。「ここを抑えても痛みます」と首筋を抑えてみせた。「ここも」と男は足を抑えた。それから「ここも、ここも、ここも」と腹や頭や腕を抑えた。
 ドクターは慎重に患者を診察して、ついに痛みの原因をつきとめた。「あなたの指の骨が折れてるんです」
 
   

 
   全身打撲の中年男がドクターヘリで病院へ搬送されてきた。ドクターが「どうしました?」とたずねる。
「はい先生、25年前のことですが……」
「そんな昔のことはどうでもよろしい。大けがをしたのは今朝でしょ。一体どうしたんですか」
「だから、その説明をしてるんです。25年前、私は農場で働き始めました。すると最初の晩、農場の若い娘が部屋にやってきて、何か不自由なことはありませんかと訊くんです。大丈夫です、何もかも間に合ってますと答えたんですが、ほんとに不自由はありませんかと訊くので、ほんとうですと答えました。するとまた、何か私にして上げられることはありませんかというので、ありませんと答えました」
「失礼ですが……」とドクターが口をはさんだ。「そんな話と大けがと、何の関係があるのですか」
「そこです」と患者が答えた。「今朝になって突然、25年前に彼女の言った意味が分かったんです。途端に屋根の上からすべり落ちました」
 
     
    ある病院の集中治療室で、恐ろしい事件が連続して発生した。日曜日の朝11時になると必ず同じベッドで患者が死亡するのだ。ドクターたちは理由がわからず、すっかり困惑してしまった。あるドクターは超自然的な怪奇現象だと考えたくらいで、誰も解明できない。
 そこで病院内の関係者はもちろん、外部の専門家もまじえて原因究明のための調査団が編成された。そして次の日曜日の午前11時少し前、恐怖の現象を確かめるために、全員が神経をピリピリさせて治療室の外で待ちかまえていた。
 時計がちょうど11時を指したとき、日曜日ごとにパートタイムでやってくる掃除のおばさんが集中治療室に入って行った。そして患者につながっている生命維持装置の電源プラグを抜き、電気掃除機のプラグを差しこんだ。
 
 
 
  (野次馬之介、2019.1.29)
 
 
 



 

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