<ボーイング>

747発達型を検討中

 

 ボーイング社が新しい747の発達型の開発を検討中と伝えられる。開発着手の決定には顧客の注文が必要だが、逆に注文が取れなかったときは747の生産も終りになるという見方も出ている。

 言い換えれば、この新しい計画は747の延命策であると同時に、エアバスA380への対抗策でもある。時期的な目標は今年の夏で、それまでに開発に踏み切るか、747自体を終わりにするか、何らかの判断がなされるもよう。

 747発達型は、乗客400〜500人乗り。7E7改め787と同じGEnxやロールスロイス・トレント1000といった燃料効率の高いエンジンを使い、主翼を再設計して軽量複合材を採用する。航続距離は14,800km。速度はマッハ0.86で、A380のマッハ0.85よりも速い。

 こうした発達型構想に対し、エアバス社は「ボーイングは大型機の需要はないと見ていたのではなかったの?」と皮肉な反論をぶつけている。これに対してボーイング社は、747発達型(450席)はA380(550席余)と777(365席)の中間に当たり、市場も異なるので747発達型の将来性は高いと主張している。なお、今の747-400は標準419席である。

 747発達型の開発が決まれば、その引渡し開始は2009年が目標。目下進行中の787の完成1年後となる。また競争相手のA380の引渡し開始が予定されている2006年の3年後である。

 747の受注数は、競争相手のA380の開発が始まってから徐々に減っており、2003年は19機、2004年は15機であった。最近の受注残は32機だが、大半は貨物機で、旅客機は9機しかない。先細りのきざしが出てきたわけだ。しかし747は何といってもすぐれた航空機であり、発達型の成否にかかわらず、いま直ちに生産中止の決断を下すのは時期尚早という人もある。

 逆にボーイング社は基本戦略を間違えたのであり、今さらA380の対抗策を考えても遅すぎるし、小さすぎるという厳しい見方もある。

 747を大型化する構想は、これまでも2度あった。1度目は1990年代なかばの747-500と747-600構想で、-600(522席)はA380にも相当する大きさだった。しかし開発コストがかかり過ぎるうえに、当時のアジア経済危機が追い打ちをかけて計画中止となった。

 次は1999年の747X構想。標準型の747Xと、A380に匹敵するストレッチ型の747X Stretchが考えられた。しかし、これもシンガポール航空が敵方A380を発注したために断念された。こうしてボーイング超巨人機は、いずれも具体化しなかったが、今回は3度目の正直になるか、2度あることは3度あるに終わるか。岐路に立つボーイングの苦悩は深い。

(西川 渉、2005.2.14)

 

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