<ボーイング787>

大いなる出発

 

 今から5年半前、2004年5月3日の米「アビエーション・ウィーク」誌が「大いなる出発」(A BIG START)と題して、ボーイング787に対する全日空の大量発注を4頁にわたって取り上げている。

 それによると「全日空は7E7中型旅客機に対し、50機もの記録的な注文を出した」という。金額にして約60億ドル。「全日空の社内でも驚きの声が上がった。常識では25〜30機がいいところだ」と。

 かつて、ボーイング707もパンアメリカン航空から20機の注文を受けて開発が始まった。しかし、全日空の注文はその2倍半。したがって、このまま後続の発注者が出てこなければ「ボーイング工場の生産ラインは全日空のひとり占めになる恐れがある」と心配している。

 当時787は7E7と呼ばれていた。Eは"Efficient"のEで、運航効率が高く、費用は従来の同級機にくらべて2割ほど安いことをあらわしている。アビエーション・ウィーク誌も、これまで707に始まり、727、737……777とやってきて、787にゆかないのか、7E7のままで通すつもりかと書いている。

 このような効率的な旅客機を「なぜ今、大量に注文するのか」。その心理的要因について、アビエーション・ウィーク誌は「現在1バレル30ドル余の石油価格が、これからもっと上がると見られるからだ」と書く。これ以上に値段が上がれば、燃料費だけで採算が合わなくなる。なるほど当時から見ると、今の価格は2倍以上の75ドル程度である。

 この2004年の当時、全日空はボーイング767を54機、エアバスA321を7機保有していた。この61機に換えて7E7を導入しようというのが、企業戦略であった。当時の全日空としては一応、7E7-8(230席)を20機、7E7-3(300席弱)を30機購入すると見られていた。

 そして2008年4〜6月の間に初号機7E7-8を受領し、北京オリンピックに向けて中国路線に投入する計画だったのである。

 そうした戦略も今や、787の開発が遅れたために狂ったが、今後どのように修正されてゆくだろうか。

(西川 渉、2009.12.18)

 

表紙へ戻る