<ボーイング787>

いよいよ運航再開へ

 ボーイング787旅客機は、間もなく飛行再開になるもよう。

 同機はバッテリーの出火や不具合によって今年1月16日に飛行停止命令が出された。その時点で、全日空と日本航空では合わせて24機が定期便に就航していたが、あれから3ヵ月が経過して、早ければ5月、遅くとも6月には飛行再開と伝えられる。

 もっともバッテリー過熱の原因は、まだ確定していない。そこでボーイング社は不具合の内容にかかわりなく、新しいバッテリー・システムを設計し、これを取りつけた787の試験飛行を4月5日まで続けてきた。その結果を、FAAは詳しく審査しており、おそくとも数週間以内に飛行再開の承認を出すもよう。

 これで、エアラインの定期運航が始まると同時に、約800機の注文を受けている量産機の引渡しも始まる。1機当たりの価格は約200億円。

 なお米運輸安全委員会(NTSB)は今週、2日間にわたる聴聞会を開催する。主題は1月7日ボストン国際空港における日本航空787のバッテリー発火に関するもので、多数の関係者を一堂に集め、不具合の全体像を明らかにする。特に、このバッテリーが2007年に型式証明を取った当時、実は「特別条件」つきだったので、それも問題になると思われる。

 専門家の意見によれば、リチウム・イオン・バッテリーを航空機に使うのは根本的な問題がある。ただし、新しい技術が生まれてくれば、この問題は少なくなる。その新技術がFAAのいう「特別条件」だったはずで、2007年から最近までの5年ほどの間に、果たして生まれたのかどうか。

 ボーイング社がこの3ヵ月間に実施してきた787の改修内容は、出力電池を分離して絶縁し、充電器の回路を取り替えたこと。さらに、それをステンレスの容器に入れて、火が出ても他に燃え移らぬようにすると共に、排出管をつけて内部の液体や蒸気を逃がすようにしたというのである。これが新技術に相当するかどうか、NTSB聴聞会で討議の焦点となるであろう。むろんメーカーの方は「十分に安全」と胸を叩いている。

 たしかにリチウム・イオン・バッテリーは、素人にはわけの分からぬところがある。われわれの身のまわりでも、かつてノートパソコンが発火したとか、iPadが異常な熱を発するとか、電池の問題は飛行機ばかりではない。飛行機の方で解決策が見つかったならば、それをパソコンにも応用し、安全で長持ちのするバッテリーを取りつけて貰いたい。

 さらに大きく考えるならば、バッテリー技術の進歩は、昨今の電力問題、エネルギー問題にもすぐれた解決策をもたらすであろう。

(西川 渉、2013.4.21) 

 

 

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