あれから5年

 あれから早くも5年がたった。あの多発テロ事件が世界に与えた影響が如何に大きいものであったか、昨9月11日のアメリカの行事や、それを伝える新聞記事やテレビ番組の量と質を見てもよく分かる。

 とりわけ大きな影響を受けたのが航空界で、乗客が減ったために収入が急減し、競争が激化して、業績が悪化し、アメリカでは総数16万人の従業員が解雇された。この5年間の航空界の損失は350億ドルで、それを補うために260億ドルの借金をかかえこんだという。旅客の方もきびしい保安検査に悩まされるようになり、空港では長蛇の列をつくって長時間待たなければならない。こんな苦痛を我慢するくらいならば、もう二度と海外旅行はしたくないと思う。

 保安検査のための政府や航空会社の費用もバカにならない。儲かるのは警備会社と検査器具のメーカーばかりである。もっとも最近、1人あたり30秒で保安検査をすませることが可能な検査器具の開発が進んでいるとも聞く。そんな航空界へ石油価格の高騰が襲いかかってきた。燃料費はどんどん値上がりし、どの航空会社も経費の切りつめや合理化だけでは追いつかない状況にある。

 最も気の毒なのは、航空界ではないが、身を挺して救助活動に当たった人びとである。ガレキの中で粉塵やダイオキシンを吸い込み、今になって体調を崩し、ガンになる恐れもあるとか。

 悪い話はキリがない。ビンラディンだけがのうのうと安逸をむさぼっているかに思える。9月11日のアメリカで見られたマンガをご覧いただきたい。


政権が維持できたのも、実はこの事件のお陰。
「大統領、ビンラディンから電話です」


タカ派のブッシュ政権もすっかり縛られてしまった


つわものどもがガレキの跡


今では見張り番


「まだ生きてるぞ〜」


5年後の教訓――靴の検査と化粧品の持ち込み禁止


無辜の死者は多く、元凶は悠々


アメリカ人好みの絵だが……

(西川 渉、2006.9.12)

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