<エアバス>

A350の開発決定

 

 欧州エアバス社はいよいよA350双発ジェット旅客機の開発を決めたらしい。11月末の時点では見送られたが、この12月10日2大株主EADSおよび英BAEシステムズの重役会で、注文獲得のための営業活動が正式に認められたという。

 これでボーイング7E7にも多少の影響が出てくるだろう。エアバス社がA380超巨人機に向かうなら、こちらは長距離用中型機というので7E7計画がはじまったが、あくまでボーイング追討をめざすエアバス社は、A380が未完成のままで早くも次の開発に踏み切った。すさまじいばかりの闘争心である。

 A350は現用A330を基本としながら、A380の開発から得られた新技術を採り入れる。主翼は有害抵抗をなくした形状で、カーボンファイバー製。尾翼の形状も改良され、後部胴体にはカーボンファイバーを使う。キャビンも新しい。にもかかわらず、A330のパイロットは追加訓練なしでA350の操縦が可能。

 エンジンはボーイング7E7向けに開発中のGEnxとRRトレント1000を流用、パイロンは全チタニウム製になる。エンジン1基あたりの推力は25,000〜31,000kg。

 A350の派生型はA350-800とA350-900の2種類があり、それぞれ7E7-8と7E7-9に対応する。

 これらの比較は下表のとおり。座席数はA350の方が少しずつ大きい。したがって1席当りの燃費、運航費などはA350の方が小さい。経済性を標榜する7E7よりもさらに経済的というわけである。航続距離は2か月前の計画よりもやや伸びて、7E7と同等もしくは上回るところにまでなった。また1席当りの自重が小さいのは、主翼や胴体に複合材を多用する結果であろう。

 

A350-800

7E7-8

A350-900

7E7-9

座席数

245

217

285

257

航続距離(km)

15,900

15,700

13,900

14,200

座席当り燃費

-2.50%

D

=

D

座席当り運航費

-7%

D

-3%

D

座席当り自重

-3%

D

=

D
[注]Dは7E7の基準値。それに対するA350の比率を示す(エアバス資料)

 エアバス社は、こうした中型長距離旅客機の市場性について、向こう20年間に3,100機の需要があると見ている。うち1,800機は250席級のA330-200、A350-800、7E7-8への需要、1,300機はA330-300、A350-900、7E7-9への需要だが、A350は半分以上のシェアをめざす。

 なおA350に対する具体的な発注はまだない。おそらくは米ノースウェスト航空が最初のローンチカスタマーになるのではないか、とも報じられているが。

 開発費は30〜40億ユーロ(約4,200〜5,600億円)。2010年前半の就航をめざすが、この就航1号機が-800か-900かは未定。顧客の意向によっては-900が先になるかもしれないという。

(西川 渉、2004.12.14)

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