<パリ航空ショー>

エアバスA350会場に飛来


パリ航空ショー上空を飛ぶA350

 初飛行したばかりのエアバスA350XWB旅客機がパリ航空ショーに姿を見せた。この日6月21日は、初飛行の6月14日から1週間しか経っていなかった。

 A350は初飛行の翌々日、19日に2回目の飛行をおこない、21日には午前10時50分ツールーズ空港から3回目の離陸をした。機は地中海沿岸を東へ向かったのち、モンペリエ付近から機首を北に向け、リヨンを越えて約2時間半の飛行ののち、午後1時25分ルブールジェ空港の上空に姿をあらわした。

 そして高度を下げてショー会場に入ると、滑走路にそって地上160メートルの高さで1回だけ通過、そのまま上昇しながら右旋回をして南西の方へ戻って行った。きわめて短い間のおとなしい飛行で、観客にとってはもの足りなかったにちがいない。

 この飛行はエアバス社の予告もあって、多くの人が期待をもって待ち受けていた。しかし同時にまた、そんなことができるのかという疑問を持つ人も多かった。なにしろ試験飛行が始まったばかりの大型旅客機である。これを多数の人が集まっているところで飛ばすのは危険も多い。天候も問題だし、生まれたばかりの機体のどこかに小さな不具合が見つかるかもしれない。最大の難関は、安全を重視する航空当局の飛行許可であった。しかしエアバス社は、ショー会場の上空通過も飛行試験の一環という主張を貫き、ついに認められた。

 こうしたことで、A350はまさにパリ航空ショーという檜(ひのき)舞台で大見得を切ったような恰好になった。これまで数年間ショーの主役は決まってボーイング787であった。A350の直接のライバルだが、そのスターの座が移ったのだ。新しい「スター誕生」といってよいであろう。

 このときフランソワ・オランド仏大統領もスペシャル・ゲストとして来場、A350の飛行ぶりを見た。フランス版「天覧飛行」といえるかもしれない。

 A350は航空ショーで、単に飛んで見せただけではない。開会4日間のビジネス・デイの間に、新しく69機、214億ドル(2兆円余り)相当の注文を集め、実務面でも大きな成果をあげた。

 発注契約に調印したのは米ユナイテッド航空、エールフランスKLM航空、シンガポール航空、スリランカ航空であった。

 ユナイテッド航空との契約は35機のA350-1000に関するもので、かねて発注していた25機のA350-900を-1000に変更すると同時に、-1000を10機追加発注した。

 エールフランスKLM航空はA350-900を25機発注し、さらに25機を仮発注した。シンガポール航空はA350-900を確定30機、仮20機発注。スリランカ航空はA350-900を4機確定発注した。

 なお、パリ航空ショー前半の4日間で、エアバス社の獲得した旅客機全製品の新規受注数は確定241機、仮225機となった。対するボーイング社の受注数は確定285機、仮132機という。

(西川 渉、2013.6.23)

 


パリ航空ショー会場に飛来したA350

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