<エアバス>

A380ヒースロウへ

 

 5月18日のBBCニュースが、エアバスA380のヒースロウ空港着陸のもようを伝えている。インターネットで「BBCニュース」にアクセスすれば、2分40秒にわたって着陸のもようをビデオで見ることができる。ほかにも機内の案内などのビデオがある。

 ヒースロウに着陸したA380はコクピットの窓から2本の英国旗を掲げてターミナルへ向かった。これらを見ていると、機体が大きいせいであろう。滑走路――特に誘導路が細く見える。左右の翼が大きく路面の外に張り出しているからだ。といって何か不都合があるわけではない。A380の乗員たちも事前に空港へやってきて下見をしたという。

 ヒースロウ空港はA380受け入れのために、8.5億ドル(約950億円)を費やして施設をつくり直した。うち3億ドルは滑走路の幅を広げ、表面を強化したもの。ほかに新しい誘導路をつくり、旅客の乗降のためのピア6(長さ280mの桟橋)を新築するなどの準備を整えた。ピア6はターミナル3にあって、4機のA380を同時に停めることができる。

 この超巨人機がヒースロウに着陸したのは初めてで、ベルリン国際航空ショーILA(5月16〜21日)展示の途中だったらしい。機はILAの開催されたシェーネフェルト空港へ5月17日に到着、翌日ロンドンへ飛んで、再び19日早朝ベルリンへ戻って行った。ロンドン着陸の実務上の目的は、空港の新しい施設がA380に合うかどうかを検査するためであった。

 A380は最近までに、エアライン16社から159機の注文を受けている。量産1号機は今年11月シンガポール航空が受領し、12月からロンドン〜シンガポール〜シドニー線に就航させるという。ただしA380の開発日程はやや送れ気味で、この日程通りにゆくかどうか、まだ確定的ではない。

 日本はどうするのか。航空界のトップは、これら競争相手の様子を見て決めたいなどと政治家みたいなことを言っているが、いささか情けない。自社の使用機として適するのかどうか、採算に合うのかどうか、市場競争の道具になり得るのかどうか、そして何よりも旅客を惹きつけることができるのかどうか、企業として自分自身の立場を踏まえて決断して貰いたいもの。

 もっとも敵の様子をうかがっているのはアメリカ勢も同様。ただ、アメリカの大手は苦しい不況からようやく抜け出したばかりで、超巨人機に飛びつく元気はまだない。

 ともあれ、日本に乗り入れるようになったら、次の海外旅行はA380便を選んで、シャワーでも使いながら飛ぶことにしよう。

(西川 渉、2006.5.19/修正加筆2006.5.22)

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