<エアバス>
A380受注数と引渡し数 10月25日いよいよエアバスA380が就航する。第1便はシンガポールからシドニーへ飛ぶものだが、それにつけてもこの超巨人旅客機は何機の注文を受けているのか。先日そんな質問を受けたので、調べてみるとさまざまな数字が出てきてなかなか分からない。
おそらくは発注するエアラインの方にもいろんな思惑があって、必ずしも真正直に公表するわけではないからであろう。逆に発注したといっても、本当はまだ正式調印はしていないとか、それぞれに込み入った事情がある。メーカーの方も顧客の意向を思んばかりながら、何もかも全て公表するわけにはいかない。といったことで、明確な数字は時間がたたないと出てこない。
そういうことを考えながら、さまざまな発表やニュース資料をインターネット、新聞、雑誌などから探って行くと、次表のような結果が得られた。これが本日現在の数字と見ていいのではないだろうか。取りあえず、ここに記録しておきたい。
エアライン 確定発注機数 仮注文 VIP 合 計 エミレーツ
47 8 ―― 55 カンタス
20 ―― ―― 20 シンガポール
19 ―― ―― 19 ルフトハンザ
15 ―― ―― 15 エールフランス
12 ―― ―― 12 ILFCリース
10 ―― ―― 10 タイ
6 ―― ―― 6 ヴァージン
6 ―― ―― 6 マレーシア
6 ―― ―― 6 カタール
5 ―― ―― 5 キングフィッシャー
5 ―― ―― 5 大韓航空
5 ―― ―― 5 中国南方航空
5 ―― ―― 5 エチアド航空
4 ―― ―― 4 英国航空
―― 12 ―― 12 スペイン・マルサンズ
―― 4 ―― 4 社名未公表
―― ―― 1 1 合 計 165 24 1 190 念のために、最近の雑誌や新聞に最も多く出てくる数字は上表左欄の「165機」である。それに対して最近、英国航空が12機、スペインのマルサンズ・グループが4機を発注したというニュースが流れた。また、しばらく前にエミレーツ航空が8機を追加発注したというニュースがあった。これが正式調印されたものかどうか確認できないので、上表では仮注文ということにしておく。現に米アビエーション・ウィーク誌(10月15号)の伝える発注数は、これらを含めていない。
しかし数日前の日経新聞は、これを加えたものであろうか、「189機」という数字を使っていた。ただし、その内訳など根拠について説明はない。
もうひとつ上表「VIP」とは、先月アトランタのNBAA大会で発表された社用ビジネス機「空飛ぶ宮殿」(Flying Palace)だが、発注者の名前は公表されていない。おそらくは中東の石油王ではないかという憶測もあるが、この1機を含めると、総受注数は「190機」になる。しかし、この数字を用いたところはどこにもない。
一方、A380量産機の引渡し計画だが、今年はシンガポール航空向けの1機だけらしい。このことだけでもA380の製造が今も苦しい事情にあることがうかがえる。しかし来年は13機に増え、2009年に25機、2010年に45機と計画されている。この計画が、その通りにゆくかどうか、エアバス社としては4年がかりで軌道に乗せることにしている。
こうした状況から見ても、エアバス社のA380によるつまずきは、初号機の引渡しをもって解決したわけではなく、今後2年間を最大のヤマ場として、まだしばらくは続くものと見られる。
なおシンガポール航空は来年初め2〜3号機の引渡しを受け、ロンドンへの定期路線に投入する。さらに4月に4号機を受領、5月から東京成田空港へ乗入れる。同年末には5〜6号機を受領して香港経由サンフランシスコへ飛ばす計画である。
【関連頁】
A380の引渡し開始(2007.9.16)
(西川 渉、2007.10.24)
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