<アジア航空ショー>

シンガポールのA380

 去る2月21〜26日、シンガポールで開催されたアジア航空ショーでは、なんといってもエアバスA380が人びとの目を惹きつけた。そのもようをシンガポール航空の広報誌が次のように伝えている。

 この2階建ての超巨人旅客機を見た人はただもう唖然として「でっかいなー」を連発するばかりであった。しかし、A380は巨体にもかかわらず、連日、静かでなめらかで優美なデモ飛行を披露した。地上にあるときは大勢の人が周囲に集まった。トレード・デイの4日間はシンガポール航空のスタッフやプレミアム・パッセンジャーが、ごく少数の人数ではあったが、機内を見る機会も与えられた。ほとんどの人は開発試験の途上にある機内など見たこともない人ばかりだが、テスト機器やバラストのための水タンクが詰まっていた。 

 この機体は、シンガポールにくる直前はカナダ北方でマイナス30℃の寒冷地テストをしていた。そこから真っ直ぐ熱帯の地へ飛んできたのである。しかしシンガポールに来たからといって、暖かい陽光を浴びながら日なたぼっこをしていたわけではない。航空ショーの合間にさまざまなテストがつづいていた。たとえば誘導路の走行、旅客ターミナルの乗降ブリッジ、貨物の積み卸し、ケータリングの出し入れ、機内清掃など、チャンギ空港に新設された地上施設との整合性が確認された。

 デモ飛行にもシンガポール航空のパイロットが同乗して、飛行感覚や離着陸を体験した。これから訓練計画をつくる際の参考にするためであったが、その感想は、シンガポール航空が5機を運航中のA340-500の操縦感覚によく似ていて、非常におとなしい飛行機という感じだったらしい。いまA340-500はシンガポールからロサンジェルスやニューヨークへの定期便に使われている。

 A380は、これまで250回、1,000時間の試験飛行をしている。このA380を、シンガポール航空は今年末までに定期路線に就航させる予定である。

(西川 渉、2006.3.27)

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