<英国アヴセン社>
「画期的」航空機を提案 英国のアヴセン(Avcen)という会社が、「画期的」と称する新しい航空機を提案している。「ジェットポッド」と呼ぶダクテッドファンを利用した双発ジェット機で、巡航550km/hの飛行性能を持ちながら、わずか125mの滑走で離着陸でき、キャビンは非常に大きいといった特徴をもつ。
しかも騒音は小さく、同クラスの普通のジェット機にくらべて半分程度。そのうえ価格は100万ドル以下で、双発ジェットとしては最も安い部類に入る。
市場目標は現在ヘリコプターが使われている分野をねらい、運航費の高いヘリコプターに取って代わることを戦略の一つに置いている。そのためビジネス飛行や救急救助はもとより、エアタクシーや定期運航にも使うことができる。たとえば都心部と空港を結ぶ旅客輸送の場合、ヘリコプターで15分程度の飛行区間を、アヴセン機は3分程度で飛んでしまう。しかも昼夜を問わず、1日50回くらいの往復も可能。むろん計器飛行ができる。
アヴセン社は15年ほど前(1989年)ロンドンで発足、自家用機から大型ジェット旅客機、さらには軍用機やヘリコプターなど、さまざまな航空機の内装工事をしてきたが、1997年頃から短い滑走路でも発着可能なSTOL機について研究を始めた。アヴセン社は、この構想にヘリコプターや軽ジェットの特性を採り入れ、新しい未来型航空機を考えるようになった。
同時に、チャーター飛行の利用者を初め、大都市の住民や通勤者を対象にアンケート調査をおこない、これからの望ましい航空機とはどのようなものかを探ってきた。
そこから、新しいアヴセン機には次のような特徴が賦与された。
- 推力の割に騒音がいちじるしく低い
- 離着陸距離は125m
- エンジン推力は水平および垂直方向のいずれにも向きを変えられる
- 550km/hの高速巡航
- 日常的な頻繁な離着陸が可能
- 頑健な前輪式降着装置
- 胴体後部の大型クラムシェル・ドア
- 安全確保のための全面的なリダンダンシー(重複装備)
- キャビンは非与圧
- パイロット単独の計器飛行が可能
- キャビンは幅が広く、天井が高い
- 地形映像マッピングを標準装備
- 防氷装備
- 完全逆噴射
- 双発とエンジン推力の余裕による安全性
- 操縦桿はサイドスティック
- キャビン窓が大きく、機内は明るい
- ゆったりした6座席
- 機体の上にカメラを取りつけ、エンジンをモニターする
- エンジン空気取り入れ口は鳥衝突と異物防護
- パイロットの視界は前、頭上、足もとの全方位にわたって広い
アヴセン社では、こうした「ジェットポッド」原理による新しい航空機を、民間用途はもとより、軍用機や無人機としても提案し、共同開発のパートナーを探している。
(西川 渉、2004.12.21)