<ファーンボロ前夜>

エアバス対ボーイング(2)

 

 ファーンボロ航空ショーを来週に控えて、エアバス対ボーイングの論争は、いよいよ激化してきた。ショー会場でどんな発表競争がなされるか、野次馬としては大いに楽しみである。

 ここでは両社の論争に先立って、先頃エアバス社で示されたボーイングとの比較事項を整理しておきたい。ボーイング社が見れば腹の立つような内容もあるかもしれないが、飽くまでエアバス側の主張である。できればボーイングからも、エアバスへの反論を聞きたいものである。

2003年次の受注機数と金額。ボーイングに較べて、機数はもとより、
金額はさらに大きいというのがエアバス側の主張。A380の受注が効いたのであろう。

引渡し数もエアバス機の方が多かった。

最近はA320ファミリーもよく売れている。
1993年11月〜2004年5月までの受注数は上左図。右図は今年1〜5月の数字。
ここでは737NG、すなわち新世代の737で、それ以前の機数は入っていない。
NG とは New Generation の略であろうが、エアバスの内心を邪推すれば、
No Good の意味が含まれているかもしれない。

これまで737を飛ばしてきたエアラインも、上表の通り、
A320ファミリーへ切り換えるところが増えてきた。すでに44社に上るというのだが。

「あなたは、エアバスとボーイングのどちらが好きですか」
エアバスと答えた旅客が多かったという。

では、どんなところが好きなのか。A320と737NGの好悪の差が大きい点を見ると、
上図のようにキャビン騒音、キャビン幅、キャビンのゆったり感、キャビンの明るさなど。
座席の快適さなどにほとんど差がないのは、メーカーや機種の違いよりも、
運航会社の座席配置の問題だからとエアバス社はいう。

研究開発費の収入に対する比率をボーイング社と対比したグラフ。
このような「未来への投資」もわが社の方が多いというのがエアバス社の主張。


ボーイング7E7については、むしろエアバス機との差がないところが問題という。
つまりA330の焼き直しにすぎないというのがエアバス社の主張。

ボーイング747-400とA380との比較。1席あたりの直接運航費(燃料費、整備費、乗員費、
着陸料、航行援助料)はA380の方が17%安く、キャビン面積あたりの費用は26%安いという。

747-400に対して、A380は乗客が35%増、騒音は半分だそうである。

A380は離着陸性能が良いので、747-400よりも滑走距離が短い。
したがって747の発着できる空港ならば、どこでも使うことができる。

かくて、大小12機種をそろえたエアバス機は、
ボーイング機を退けながら堂々の前進を続ける……
というのが、この図を描いたエアバス社の心情であろう。

(西川 渉、2004.7.17)

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