<欧州エアバス>

A380間もなくロールアウト

 

 いよいよ、エアバスA380のロールアウトの日が近づいた。この1月18日(火)南仏トゥールーズの午前10時半というから、日本の夕方6時半ということだろうか。世界中から記者団を招いて、盛大なセレモニーをおこなうらしい。

 A380はご承知のとおり、長さ70.8m、主翼スパン79m、総重量527トン、乗客555人乗り。ボーイング747より140席ほど多い。さらに座席をぎっしり並べると1,000人くらい乗れるというから、747の2倍になる。

 ロールアウトの後は、地上での試運転を経て、2〜3月頃に初飛行する。夏のパリ航空ショーでは、巨体が空を舞う様を見ることができるであろう。定期路線への就航は2006年の予定。

 最近までの受注数は139機。うちアメリカからの注文は15機だが、10機はフェデラル・エクスプレスの貨物用、5機はリース会社ILFCからのもので、どこの国にリースされるか分からない。要するにアメリカ勢としては、エアラインも含めて一種の不買運動により、懸命に対抗しているかに見える。その点は日本も同じで、全日空も日航も最近ボーイング7E7をそろって発注し、アメリカへの忠誠ぶりを示した。

 もっともエアバス社に云わせると、今のアメリカ航空界の不況では、こんな高価な超巨人機は買いたくても買えない。そのうちに、景気が回復すれば注文も出てくると楽観的な見方をしている。日本もあとになって吠え面をかかぬよう注意する必要があろう。

 もうひとつ、アメリカ側に云わせると、これはボーイングのお膝元シアトルの新聞だが、エアバス社はA380を35〜40%引きのディスカウント価格で売っていると書いている。したがってA380の開発と製造は、250機を売れば採算がとれるというが、実際は325機までは無理だろうと。

 さらに同じ新聞のインタビューに答えて、元ボーイング社の役員で今は米エアラインのトップにある人物の談話がでている。「こんな大きな飛行機に乗ろうとすると、先ず空港の待合室にギュウ詰めに詰めこまれ、それから家畜の群れのようにのろのろとゲートの方へ追い立てられる。機内では500人の他人と一緒にすわり、着いたところでは500人の他人と一緒に荷物が出てくるのを待ち、税関の前では500人の他人と一緒に並ばなければならない。そんな苦難を誰が我慢できるかね?」

 かくて、いささか波乱含みの中で、数日後にはA380が正式に組立て工場から出てくる。しかし、飛び始めたら波乱に逢わぬように祈りたい。


式典準備中の巨体――まだ包装紙で覆われている

【関連頁】

◎ エアバス訪問――姿を現した超巨人機(2004.8.2) 

◎ ファーンボロ前夜――エアバス対ボーイング(2004.7.16)

(西川 渉、2005.1.15)

(表紙へ戻る)