<ボーイング受注数>

1千機突破の新記録

 ボーイング社の2005年中の民間機受注数が1,000機を超えた。

 常に王座を守りつづけていたボーイング社は、2001年以来エアバスの後塵を拝してきた。特に2004年は受注数がわずか272機まで下がった。しかし2005年は一挙に立ち直って3倍以上の1,002機という注文を獲得したのである。これは1988年の年間最高記録877機を上回る。金額にすれば、公表価格からの推定でおよそ1,150億ドル(約12.5兆円)と見られる。

 このうち569機は737、154機は777、235機は787で、いずれも年間受注数としてはこれまでの最高記録。ほかに747が43機、767が15機という受注で、総数では1,016機になる。しかし一方で717のキャンセルが14機あったため、純受注数は1,002機になった。

 ボーイング機の受注数

機  種

2005年

2004年

737

569

147

747

43

10

767

15

9

777

154

42

787

235

56

717

-14

8

合   計

1002

272

 対するエアバス社は、まだ2005年の受注数を公表していない。11月末現在では687機であった。したがって12月中の成約が如何に多くても、ボーイングの千機には及びそうもない。けれども引渡し数では、2005年もエアバスがボーイングを上回るはずである。

 なお両社を併せた受注数は、1989年の1.631機という最高記録を超えることは間違いないだろう。

 このように2大旅客機メーカー、ボーイングとエアバスは、双方とも受注数が伸びている。ということは、2001年の911多発テロで打撃を受けたエアライン業界が、その影響から脱却してきたことを示すものと見てよい。

 エアライン業界の好況について、1月6日の英「エコノミスト」誌は次のように分析している。旅客需要の伸びは世界中で7.7%。地域別では、最も大きいのが北米の9.1%、アジアの6.6%、ヨーロッパの6.4%となっている。

 IATAによれば、このような好調ぶりで、原油価格が2003年と同じ1バレル30ドル――すなわち今の半分程度ならば、2005年のエアライン業界の利益は過去5年間の損失合計を取り戻すほど上がったはずという。

 旅客の伸びは今後も続くと見られる。特に中国とヨーロッパでは10%前後の伸び率が予想される。その背景には格安エアラインが活発な活動をしているためと見られる。


ボーイング777-300ER

 また「ワシントン・ポスト」紙(1月5日付)の分析では、開発中の787や新しい改良型777が燃料効率にすぐれ、運航費が節減できる点もエアラインを惹きつけたのであろうと見る。これらは、いずれも2008年に就航の予定だが、石油価格の高騰につれて今後なお受注数が増えるのではないかという。

 対するA350は、出足が遅れた。エアバス社がA380の開発に手を取られていたとはいうものの、2010年の就航予定では多くのエアラインが787に向かうのは当然のことかもしれない。

 しかしA350も懸命の立て直しをはかっている。一方で787の受注が生産能力の限界に近づき、これから発注しても引渡し日程は何年も先になるところから、2006年はA350にチャンスが巡ってくるのではないか。双方の善戦を期待したい。


ボーイング787ドリームライナー(夢の旅客機)

(西川 渉、2006.1.10)

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