<笑うボーイング>

ストレッチ型787の開発へ

 ボーイングが787ストレッチ型の開発に意欲を見せている。787-10と名づけられた同機は787の胴体を延ばして、全長68mの290人乗りとするもの。すでに設計研究も進んでおり、「エアラインとしても魅力があるはず」。開発着手が決まれば、就航は2012年になる予定。

 この787ストレッチ型を最も強く望んでいるのは中東ドゥバイのエミレーツ航空で、今の標準型787(223席)では小さすぎるし、787-9(259席)でも小さいという見方をしている。というのも現用777-200ERの後継機にする考えがあるためで、本来は300席を望んでいる。そのためエミレーツに対しては、エアバスからもストレッチ型A350-900(300席)が提案されている。


英「フライト・インターナショナル」誌2005年12月23日

 787の受注数は昨年末までに364機となった。これはボーイングとしても予想外の売れ行きで、笑いが止まらない。さらに今後なお500機の提案をエアライン各社に出しているという。

 問題は顧客との約束または契約をその通りに果たせるかどうか。787量産機の引渡し開始は2008年夏の予定だが、翌年末までの1年半の間に112機を製造しなければならない。以前は同じ期間に96機の製造予定だったが、受注数の増加につれて引渡しの約束数も増えた。

 787は、すでに2012年の製造分までが売り切れている。したがって今後も受注してゆくには、毎年の製造数を増やさなければならない。それには日本の三菱重工やイタリアのアレニア社など多数の下請けメーカーの協力が必要で、ボーイングだけで決められる問題ではない。787は特に外部での製造部分が多いので、こうした計画変更は決してやさしくはないのである。

 しかも同じ787でも派生型がまじっていれば、製造工程はさらに複雑になるわけで、エミレーツ航空の希望を入れて787-10をつくることになれば、いっそうむずかしくなるであろう。ボーイング社は、しかし、こうした複雑な調整も可能であるとして、強気の姿勢を見せている。

(西川 渉、2006.1.11)

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