<ティルトローター>

BA609完全遷移飛行

 ベル/アグスタ・エアロスペース社が開発中の民間型ティルトローター機、BA609は7月22日、ナセルを前方水平まで傾け、初めて飛行機モードで飛んだ。

 飛行中の最大速度は350q/hだったが、今後徐々に速度を上げ、設計最大速度480q/h以上までもってゆく予定。振動は、予想外に少なかったという。

 BA609は今年6月3日に試験飛行を再開、1か月半のあいだ飛行を続けてきた。この間、6月なかばには脚を引っ込め、ナセルも前方60°まで傾けて飛ぶようになった。このときの最大速度は231q/hで、完全な飛行機モードによる最大速度の半分以下であった。


(写真:ベル・ヘリコプター社提供)

 BA609は2003年3月7日に初飛行、4月までの2か月間に9回で14時間の飛行をしたのち分解検査に入り、6月初めの飛行再開まで2年余りの改修作業を進めてきた。

 改修の内容は、操縦系統のコンピューターに新しい飛行機モードのソフトウェアを組みこみ、それを操縦翼面やプロップローターと連動させることなど。

 ほかにもさまざまな改良が加えられ、飛行再開の前には1ヵ月半にわたって地上に組んだやぐらの上に固定し、ナセルを水平にして試運転をつづけた。飛行機モードで飛んだときの、機体にかかる荷重や安定性を測定するためである。

 またナセルの前傾0°(垂直状態)から75°(かなりの前傾)までの間で、エンジン・コントロールと追随の速さなどをチェックしたり、飛行中の再点火の要領を確認したり、さまざまな迎え角でエンジン吸気口の中の空気流の歪みを測るなどの試験をおこなった。

 なお、緊急時の場合、ナセルがどんな角度であろうと、パイロットはスィッチひとつでナセルを垂直位置にまで戻すことができる。戻る速さは毎秒8°だから12秒以内にヘリコプター・モードへ戻ることになる。

 いっぽう、試作2号機は、すでにイタリア・アグスタ社にあって、今年秋の初飛行を予定している。

 そのため、イタリア側では1号機の試験飛行の結果をそのまま2号機に取り入れ、所要の改修を加えつつある。9〜10月には地上運転を開始、12月のクリスマス前には初飛行する目標。

 なお、アグスタ社では試作3号機の飛行試験も担当することになっている。4号機はベル社が担当する。

 BA609民間型ティルトローター機は、これらの試験飛行により、2008年にはFAAおよび欧州航空局(EASA)の型式証明を取る計画である。


(写真:ベル・ヘリコプター社提供)

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BA609飛行再開

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(西川 渉、2005.7.25)

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