インターネットは地球脳

 

 97年末に出たばかりの『インターネットはグローバル・ブレイン』(立花隆著、講談社刊)を読んだ。

 グローバル・ブレインとは、日本語に直せば「地球脳」とでもいうのだろうか。地球的な規模から見れば、人間は1人ひとりが細胞のようなもので、個々の細胞がいくつか集まって家族になり、企業をつくり、国家として機能を果たすようになってゆく。

 これまでは、そうして出来上がった組織や機関――生物学的な比喩からすれば器官――がばらばらに存在していた。しかし今、進化が進むにつれて、相互に調整し、調和を保つための連絡網ができてきた。それがインターネットであり、人間の神経回路網にたとえることができる。この神経回路網が地球全体を覆い、活発な情報のやり取りをするようになった。とすれば今や、地球はひとつの脳になりつつある。その巨大な脳からすれば、人間は脳細胞のひとつに過ぎないのかもしれない。

 本書における著者の説明の仕方はやや違うけれども、基本概念は変わらない。われわれの頭の中で脳細胞がさかんに連絡を取り合い、情報の伝達と交換をし合っているように、地球という頭脳の上でインターネットという神経回路を通じて無数のメッセージが往き交うようになった。それが本書の表題である。

 もっとも今の地球脳はまだまだ未熟である。これから脳としての機能を高めてゆくためには、神経回路の網の目が細かく濃密でなければならない。それには連絡回路をもっと増やしてゆく必要がある。というので、著者はインターネット上の相互のリンク(連環)を重視する。

 本書でもニュース・リンク、美術館や博物館を対象とするミュージアム・リンク、ならびにリンクによってネットワーク上につくり上げた仮想ミュージアム、映画リンク、超常現象リンク、シネマ・リンク、指名手配と公開捜査のリンク、スフィンクス・グループのリンクなど、さまざまな連環が紹介されている。これらを見てゆくと、リンクというものが上手につくってあれば、如何に高度の機能を発揮するかが分かる。

 なおリンクを張るに当たっては、相手方の了解を取らなければならないという説がある。それに対して著者は「リンクは自由です」という。どこかの頁にリンクを張るのに「そのことで相手の許可を求める必要はありません」。「相手の許可を取らないでリンクするのはけしからんなどとバカげたことをいう人が沢山いますが、そういう人はリンクがどういうものか知らないのです」 

 私も著者の意見に賛成である。これまでもリンクについていろんな本や雑誌を読んだが、こういう明解な意見にはお目にかかったことがない。たいていは「相手方に断りのEメールを書きなさい」と書いてある。なぜ、そうしなければならないのか。理由ははっきりせず、単に「それがエチケットです」という説明だけである。

 それにリンクを張ってもらえばアクセスしてくる人が増え、自分の書いたものを読んで貰う機会が増えこそすれ、迷惑になるようなことは何にもない。第一、リンクされるのが嫌だというのならば、ホームページなど開設しなければいいのである。

 ただし、リンクをどんどん張って網の目を細かくしてゆくといっても、リンク先のホームページの数が多いだけでは駄目だと著者はいう。最近ホームページの数が急増しているが、ろくでもないものも増えているからで、ゴミのような頁が増えるにつれて、必要な情報がゴミの山に埋もれてしまい、探しにくくなるためである。

 その意味では、わが「航空の現代」もゴミといわれないよう、注意しなければならない。

 というわけで本頁も、いささかなりとも「地球脳」のお役に立ち、みずからも活性化するよう、改めて航空関連のリンク集、「航空インターネット」の頁を設けようかと思う。

 以前にも、拙文の中にボーイングやロッキード、シコルスキーやベルの名前が出るたびに、それぞれのホームページへ飛んでゆけるようリンクを張っていた。しかし、だんだん数が増えるにつれて面倒になり、いつの間にかやめてしまったのである。しかし、それでは本頁が行き止まりになって活力をなくすおそれも出てくる。

 リンクの対象は、私自身がよく見にゆくところ、面白いと思ったところにしたいと思う。

(西川渉、97.12.28)

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