FAAは地震に際して、ヘリコプターがどんなことに使えるかを検討するため、サンフランシスコ地震のもようを調査している。
この地震は1989年10月17日午後5時4分に起こったもので、サンフランシスコ湾一帯をマグニチュード7.1の地震が襲い、15秒間にわたって地面が震えた。そのため建物が倒壊し、火災が生じ、道路が崩壊し、ガス管が破損し、壁が崩れ落ちた。ベイ・ブリッジは2階建ての部分が崩壊、折りからラッシュアワーにさしかかっていた多数の車が押しつぶされた。そして電気が停まり、多くの人びとが一瞬にして愛する家族を亡くした。
さまざまな損害の中で最も目についたのはフリーウェイや幹線道路の崩壊であった。2階建てのフリーウェイは地震のために支柱が折れて、2階部分が1階に落下、1階部分は地面に崩れ落ちて、多くの車と人が下敷きになった。またサンフランシスコ市内では古い建物の多くが倒壊し、ガス管が破裂し、倒壊した建物から火災が発生した。震源地に近いサンフランシスコ南東部のサンタクルーズ市街地と郊外では、家が土台から外れ、建物は倒壊、ライフラインは何日も使えなくなった。また地割れや山崩れが起こってハイウェイの通行を不能にしたり、一方通行だけになったりした。
カリフォルニア州はヘリコプターの多いところである。地震が起こると、直ちに各地からヘリコプターが駆けつけた。遠くサンディエゴから飛んできた機体もあったほどで、これらのヘリコプターは公用機、商用機、軍用機などさまざまだが、いずれも被災地で救援活動や緊急輸送に従事した。その活動内容は次の通りである。
・救急搬送(現場から病院へ、病院から病院へ) |
阪神大震災でも、ヘリコプターはいろんなことに使われた。悪名高い報道取材を初めとして、自衛隊機による偵察、おにぎりや毛布などの緊急物資輸送、スイスからきた捜索犬の現地への輸送、首相や衆院議長の現地視察などがあり、民間機はトイレを運び、コンビニやスーパー店への非常食(おにぎり、水、パン)の輸送、医薬品輸送、電気・電話施設の復旧支援などである。
サンフランシスコの活動ぶりとくらべて遜色はないようだが、肝心の人命救助はほとんどおこなわれず、消火活動は全くなかった。その反省は震災から3年半を経た現在、どこまで実行に移され、現実になっているのだろうか。
ヘリコプターの用途は人間の想像力の及ぶ限り、無限に広げることができる。ヘリコプターは単に緊急輸送だけの手段ではない。われわれはもっと頭を柔らかくして、災害と危機に備えるシステムづくりに取り組む必要があるのではないだろうか。
(西川渉、98.10.15)
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