<ローマ字と漢字>

中国のメーカーとエアライン

 われわれの身の回りに中国の産物が増えてきた。野菜でもシャツでも時計でも、あるいは電気製品でも自動車でも、何でもかんでも中国製である。ニューヨークのお土産屋で自由の女神やツインタワーの模型を買おうとすると、必ずといっていいほど「メイド・イン・チャイナ」の文字が目立たぬように記されていて、急に買う気をなくさせてくれる。

 こうなると航空機だって中国製が出てくるのは当然のことだが、今ここで「メイド・イン・チャイナ」の良し悪しを論じようというのではない。問題は英米の新聞雑誌を読んでいて、中国の航空機メーカーの名前が発音通りのローマ字で書いてあるので、ピンとこないことである。

 やはり中国の名前は会社(公司)の名前も地名も漢字でなければ納得がゆかない。ローマ字やカタカナで書いてあっても意味不明で記憶もできないのである。たとえば Changhe Aircraft とか Hongdu Aviation などの文字を見ても、私は読み方すら分からず、とても憶えられない。

 そこで、これは自分のためのメモとして、中国の航空機メーカーとエアラインに関する英語表記と漢字表記の対照表をつくることにした。時間をかけて、字引やアトラス(地図)を参照しながら出来上がった結果は下表の通りである。

航空機メーカー

メーカー(英字表記)

漢  字

所在地

製  品

Harbin Aircraft Industry (Group)

ハルビン航空機工業公司

ハルビン(哈爾浜)

ヘリコプター
リージョナル機

Shenyang Aircraft Industry (group)

瀋陽航空機工業

瀋陽

軍用機

Xian Aircraft Industry (group)

西安航空機工業

西安

機体部品

Chengdu Aircraft Industry (group)

成都航空機工業

成都

エンジン、軍用機

Shanghai Aviation Industry (group)

上海航空工業

上海

旅客機組み立て

Changhe Aircraft Industry (group)

昌和航空機工業

景徳鎮(Jingdezhen)

ヘリコプター設計

Hongdu Aviation Industry (group)

洪都航空工業

南昌(Nanchang)

戦闘機、訓練機、農業機

エアライン

エアライン(英字表記)

漢   字

Air China

中国国際航空公司

China Southwest Airlines

中国西南航空

China Eastern Airlines

中国東方航空

China Northwest Airlines

中国西北航空

China Yunnan Airlines

中国雲南航空

China Southern Airlines

中国南方航空

China Northern Airlines

中国北方航空

Xinjang Airlines

中国新疆航空

 上の表には各エアラインがどんな航空機を使っているか、その一覧も入れたかったのだが、調べてみると各社とも機種が多くて表の形が崩れてしまうので取りやめにした。要するにボーイング747、777、767、737、エアバスA340、A330、A320と、あらゆる種類の旅客機が使われている。いずれも、ほとんど西側の機体で、かつてのようなソ連製は余り見当たらない。

 もうひとつの特徴は、一つのエアラインがさまざまな機種を使っていることで、それを統一しようという姿勢は感じられない。良くいえば、新しいものは何でも取りこむという積極的、意欲的な姿勢で、こんなところにも中国古来の「百家争鳴」の伝統が生きているような気がする。

 


中国空軍のJian−8迎撃機。漢字では建8型とでも書くのだろうか。
……そう書いておいたところ、木田洋氏から「JIANの漢字は『殲』です。
戦闘機には敵を殲滅すると言う意味で殲の漢字を頭につけたようです。
簡体字ではがつ(歹)偏に漢数字の千と書きます」と教えられた。有難く訂正いたします。

(西川渉、2002.11.9/訂正2002.12.25)

(表紙へ戻る)