コマンチ半減

 シコルスキー社とボーイング社が開発中のRAH-66コマンチ武装偵察ヘリコプターは、このほど米陸軍による650機の調達が決まった。コマンチについては最近の本頁にも書いたが、10年前の用兵思想で開発が始まったものの、作業が遅れている間に時代遅れとなり、もはや計画中止になるのではないかという恐れもあった。

 むろん当時としては最新の考え方で、偵察と攻撃を一手に引き受ける能力を持たせるものだった。しかし最近は無人機で敵中深く偵察できるようになったことで、問題が生じたのである。

 にもかかわらず、650機の調達決定は、喜ぶべきことかもしれないが、英『フライト・インターナショナル』誌などは、当初の1,213機の調達計画が半分に削られたと表現している。それより前は5,000機の調達が計画されていた。それが2,000機に減り、1.200機となって、ついに650機まできたのである。

 もっとも、1機当りの価格は当初予定の750万ドルが2,000万ドルへ3倍近く値上がりするという。それなら機数を半減させた意味がないような気もするが、ソフトウェアに金がかかるとか、実証試験に金と時間がかかるとか、いろいろな事情があるらしく、その辺のカラクリはよく分からない。

 そのため実戦配備は、これも予定より遅れて、2009年末頃になるという。その代わり、年間生産数は当初計画の62機が96機へ増えるとか。

 それなら偵察だけを目的とした日本のOH-1はどうなるのか。まさか日本は無人機を使わず、身命を賭して敵中深く潜っていくという筈はあるまい。あるいは想定される戦闘場面が、日本とアメリカでは違うということなのか。いや、あれは攻撃機のカモフラージュで、いずれ変身するのだという説もあったり、何だかよく分からなくなってくる。

 アメリカの方は、コマンチが減る分AH-64Dアパッチが攻撃力を補うらしい。そのためアパッチの近代化がさらに進み、調達数がさらに増えることになるかもしれない。

 たしかにベトナム戦争、湾岸戦争、アフガン攻撃と、最近のヘリコプターの戦闘場面を考えても次々と変化する。そのため、開発に手間取ったりして愚図ぐずしていると取り残される。軍用ヘリコプターに要求されるスピードは、単なる速度性能ではなく、時代の変化に応じ得るスピードこそ大切になってきた。

(西川 渉、2002.10.31) 

 

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