<2003年実績>

戦闘機の現状 

 英『フライト・インターナショナル』誌(2004年2月3日号)が世界の軍用機の在籍機数を調べている。それによると、世界中で使われている戦闘機のうち、多い方から20番目までの機材は次表の通りという。

 

順  位

機    種

機  数

ロッキード・マーチンF-16

3,404

ミコヤンMiG-19/瀋陽 J-6/F-6

3,291

ミコヤンMiG-21フィッシベッド/F-7

2,693

ミコヤンMiG-17/瀋陽 J-5/F-5

1,730

ミコヤンMiG-23/27フロッガー

1,630

ボーイングF/A-18A/B/C/Dホーネット

1,622

RSK MiG-29ファルクラム

1,536

ボーイングF-15イーグル

1,206

スホーイSu-27/Su-30/J-11フランカー

1,187

10

ノースロップF-5

1,139

11

マクダネル・ダグラスF-4ファントム

883

12

スホーイSu-24フェンサー

773

13

パナビア・トーネイド

744

14

洪都航空工業公司Q-5/A-5

724

15

スホーイSu-17/Su-22

672

16

ユーロファイター・タイフーン

638

17

スホーイSu-25フロッグフット

621

18

ダッソー・ミラージュ2000

505

19

ダッソー・ミラージュV/X/50

467

20

ボーイングF/A-18E/F

460

 他方、軍用輸送機はロッキードC-130が群を抜いて多く、1,539機が飛んでいる。これにアントノフAn-2(987機)、ボーイングKC/EC-135(620機)、イリューシンIl-76(494機)が続く。ロッキードC-141スターリフターは11位で193機、ボーイングC-17グローブマスターは12位で184機となっている。

 ところで、先日のテレビで最新の戦闘機に関する番組を見た。一般向けの番組だから、解説も分かり易かった。そのテレビを見ながら取ったメモに多少の事項を加えて、ここに記録しておきたい。

F-15イーグル

 初飛行は1972年7月22日。以来30年が経過しているにもかかわらず、今も最強の攻撃力を持ち、格闘戦(ドッグファイト)ではこれにかなうものはないという。その任務は制空権の確保で、米本土の基地では24時間態勢で待機しており、9.11のようなテロ襲撃があったときは5分以内に発進するそうである。

 離陸にはアフタバーナを使い、1分間で高度5,000mに到達できる。最大速度はマッハ2.5。火器はAIM-9ミサイル(サイドワインダー)。パイロットも機体もぎりぎり9Gの荷重に耐えて戦闘をおこなう。米空軍には457機が配備されているが、1機も撃墜されたことはない。価格は1機2,800万ドル。


F-15

 

ロッキード・マーチンF-117Aナイトホーク

 初飛行は1981年6月13日。ロッキード・スカンクワークスが1970年代なかばからDARPA(米国防省高等研究計画局)の依頼によって極秘の開発研究に着手、実験機は約半分の大きさで1977年に飛び、1年間の試験飛行によって本物の開発が決まった。

 世界初のステルス機として、1982年に実戦配備がはじまったが、当初8年間は極秘にされていた。特徴はレーダー波を四方へ反射しないよう平面ばかりの、丸みのない機体表面で、火器も胴体内に収める。

 F-15のような格闘能力はないが、その必要もない。というのはステルス性のために、敵地へひそかに忍び込むことができる。それも夜間の単独行動が多く、黒く塗った機体は夜の闇に溶けこんで見えない。エンジンも静かで、気がついたときはすぐ傍に飛来しており、爆弾を落として飛び去ってゆく。

 パイロットは1人で操縦、航法、攻撃のすべてをおこなう。高性能の自動制御装置がそれを助けているわけである。

 ホロマン空軍基地には50機が配備されている。機体価格は1機4,500万ドル。


F117

 

ロッキード・マーチンF-22ラプター

 初飛行は1990年9月30日。F-15の後継機となる21世紀の制空戦闘機。F-15と異なる点はアファタバーナを使わずに音速の壁を超え、超音速巡航ができる。最大速度はマッハ1.7。

 ステルス性も重視され、機体表面はなめらかで、火器は内蔵される。またエンジンは空気取入れ口のはるか奥に引っ込んでいる。排気口は、格闘戦にそなえて推力変向も可能。

 米空軍はF/A-22として339機の調達を予定している。機体価格は抜きんでて高く、1機9,900万ドル。


F22

 

ユーロファイター・タイフーン

 初飛行1994年3月29日。強力F-15の上をゆく新世代の戦闘機である。英、独、伊、スペインの欧州4か国が共同開発したものだが、それにしても欧州機がなぜタイフーンなどという名前になるのだろうか。私の考える台風は、風も強いが雨も多くて湿っぽく、余り強そうな感じはない。日本にも疾風(はやて)という飛行機はあったが、台風などという間抜けな戦闘機はなかった。

 しかし、この新鋭機の実態はなかなかすばらしく、アフタバーナなしで音速を超え、超音速巡航も可能。従来の超音速戦闘機はアフタバーナを噴かしながら、せいぜい数分間の超音速が限度であった。しかもタイフーンは超音速で曲技飛行も可能という特徴を持つ。つまり高速での運動性が良いわけで、最新のGスーツをつけたパイロットは、比較的容易に9Gの荷重に耐えながら機体を操ることができるらしい。

 操縦系統は「ケアフリー・システム」と呼ばれ、人間がいちいち細かいことを気にしなくても、コンピューターが自動制御をしてくれる。火器の照準はヘルメットに組みこまれていて、標的を目視によって捉えると照準が合うので、そのままミサイルの発射ボタンを押せばよい。空中戦も地上攻撃も可能。価格は1機3,800万ドル。


「台風」

 

ロッキード・マーチンF-35JSF(ジョイント・ストライク・ファイター)

 初飛行2000年10月24日。X-35A試作機として試験飛行に臨み、ボーイングX-32と競争の結果、2001年10月26日に採用決定が発表された。

 120m程度の短距離で離陸しながら、マッハ1.6の超音速飛行が可能。またホバリングや垂直着陸も可能な攻撃機。

 2008年に実戦配備の予定。当面3,000機の調達が見こまれている。機体価格は1機3,800万ドル。


JSF

(西川 渉、2004.2.13)

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