<米大統領専用機>

使用機の更新へ

 

 アメリカ大統領専用ヘリコプター「マリーン・ワン」は、昨年夏、取り替え計画が中止になった。この計画は今のシコルスキーVH-3D(S-61)が耐用期限に近づいたため、2005年初めにイタリアのアグスタウェストランドEH-101が採用され、VH-71として改修されることになった。しかし時間と費用がかかり過ぎて、原型9機の試験飛行も進んでいながら、中断されたものである。

 とはいえ、VH-3Dをいつまでも使うわけにはいかない。今年2月なかば、改めてヘリコプター・メーカーに対し、国防省から見積り提案の要求が出された。これに対するメーカー側からの意思表示は4月なかばまでに提出され、本格的な提案競争が始まることになっている。

 アグスタウェストランド社はEH101の復活をはかり、シコルスキー社はS-92の再起をめざす。ベル社とボーイング社は共同生産中のV-22ティルトローターを提案するかもしれないと伝えられるが、果たしてどうなるだろうか。

 つづいて国防省は「エアフォース・ワン」の更新も計画しているもよう。3月24日、ゲイツ国防長官の談話では、すでに2011年度予算に、そのための調査費を組みこんであるという。今後、数年をかけて検討をつづけるらしい。

 今のエアフォース・ワンは空軍呼称ではVC-25Aと呼び、年間20万マイルを飛んでいる。いざというときは、アメリカ軍最高司令官としての命令を発し、情報収集や連絡通信が自在にできるだけの機器が搭載してある。同時に旅客機と同じような食事を出すことも可能。

 保有機は2機。垂直尾翼に28000と29000の登録記号が読める。747の派生型としては747-200Bで、導入から20年。ジョージ・ブッシュ父の大統領時代から使われてきた。747-200は、今なお旅客機として使われている機体が20機に満たない。如何に古いかが分かろうというもの。

 こちらの提案競争は、ボーイング747-8とエアバスA380が名乗りを上げるもよう。

 オバマ大統領は、大統領機について今のままで充分というが、飛行可能な状態を維持し、安全を確保するには整備費も運航費も非常に高くかかるようになった。神経も使わなくてはならない。エアフォース・ワンもマリーン・ワンも、早く取り替えたいというのが国防省の考え方である。 

(西川 渉、2010.4.5)

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