<VH-71>

米大統領専用機が初飛行

 アグスタウェストランド社が米大統領専用機として開発中のVH-71が7月3日、英ウェストランド・ヨービル工場で初飛行した。「マリーン・ワン」と呼ばれる同機は、現用EH-101大型3発ヘリコプターを基本として世界最新の技術を採り入れ、米大統領および副大統領の乗用機としてふさわしい安全性と信頼性を持つ。同時に「空飛ぶ大統領執務室(オーバル・オフィス)」としての機能を備える。

 初飛行は40分にわたっておこなわれ、最大速度250km/hまで上げるなどの試験を行なった。

 試験機は今後も2〜4号機が製作され、今年秋にはイギリスから米メリーランド州パタクセントリバーの海軍基地に移動、本格的な飛行試験に入る。この4機に加えて、さらに5機の前量産型が製作され、入念な試験をを重ねて、2009年10月から実際に大統領をのせて飛ぶ予定。

 VH-71は胴体が強化アルミ合金で製造され、15Gを超える衝撃にも耐えられる。エンジンは3基のターボシャフト(3,000馬力)で、1基が止まっても正常な飛行が続けられる。主ローターは5枚ブレード。巡航速度270km/h。

 キャビンの大きさは長さ7.6m、幅2.4m。洗面所と厨房がつく。ほかに通信室があって、コンピューターと通信装置をそなえ、ヘリコプターの機内からホワイトハウスと国防省のあらゆるコンピューター・データ・システムにつながることができる。またレーダー警報装置、レーザー探知機、ミサイル回避のための火熱抑制装置などの防御装備を持つ。

 こうした米大統領機の開発はロッキード・マーチン社を主務契約者として行なわれるもので、量産機の最終組み立てはベル・ヘリコプター社が行なう。量産機は2014年までに23機製造される予定。この間の開発と製造に要する費用は61億ドル(約7,300億円)と見積もられている。

 なおEH-101は1997年以来、すでに130機が製造され、英海軍、英空軍、イタリア海軍、カナダ軍、そして日本、デンマーク、ポルトガルの政府が使用中。

(西川 渉、2007.7.10)

表紙へ戻る