エクスプローラー4に機械を壊された

 

  

 

 これはまた、わが機械の中で何が起こったのか。何がなんだか全く分からないけれども、これまでずっとインターネット・エクスプローラーを使ってきて、それがバージョン4(IE4)に進歩することになった。というので、一と月まえに予告版というのか何か知らないけれども、雑誌の付録についていたのを取りつけた。なかなか調子が良くて、ダブルクリックの必要もなくなり、心なしか動作も速くなって、ISDN接続と共に、気持ちのよい快適なインターネット閲覧を楽しんでいた。

 ところが先日、いよいよIE4の本物が完成したというので、再びコンピューター雑誌の付録から取りこんだところ、今度はいけません。

 まず、日経新聞社から出ていたその雑誌に、インストールに当たっては古い試作版を取り外せと書いてあったので、指示の通りにやって、改めて新しい物を取りつけた。ところが、どういうわけか1回目のインストールは最後に失敗という合図が出て、何だか怪しいなと思いつつ、2度目のインストール作業で何とか騙しだまし完了させた。

 ところが完全にいけないことになってしまった。「接続」の文字が出て、プロバイダーにはつながるのだが、そこから先が進まない。トップ頁すらも表示せずに、右下の作動ランプが赤く停止したまま、いつまでたっても青くならず、したがって頁が表示されないのである。何度やっても、接続はするがその先に進まない。メールを読みにいっても同じことで、つながっても肝心のメールを読みこもうとしないのだ。

 夜の就寝前のことで、プロバイダーが混んでいるせいもあろうかと思い、翌朝午前4時頃から再び同じ接続を試みたが、どうしてもつながらない。やむを得ず新製品をあきらめて、もう一度試作版をインストールしたが、もはや元にはとに戻らない。さらに一と月まえのIE3に入れ換えたが、これまた駄目。

 結局、私の機械は、インターネットについては全く力をなくしてしまったのである。原因は分からないが、おそらく古いIEを取り外したときに、盥の水と一緒に赤ん坊まで流すというたとえのように、重要なシステムが外れてしまったのではないだろうか。

 あれから1週間を経過して、今も頁は開けない状態が続いている。そればかりかEメールも読めなくなり、新しくつくった本頁も送りこめなくなってしまった。この頁は、実は別のところから送りこんだのである。

 しかも、ホームページの作成に、私はクラリス・ホームページVer.2を使ってきたが、何と恐ろしいことに、これで本頁をつくろうとして日本語を書き入れた途端、あの「不正だから切断せよ」という忌まわしい表示が出てきて、画面が消えてしまったのである。ローマ字を打っている間はいいが、ひらがなや漢字に変換した途端に「不正」という宣言が出て消えてしまうのだ。これでホームページ作成の作業までできなくなってしまった。数千円のクラリスが使えなくなったのである。

 もうひとつ、このIE4完成品も私の見るところ余り感心しない。先の試作品は確かにダイナミックな操作感があったが、そういう弾むような感じがなくなった。シングル・クリックにしても、試作品はまさに画面のどのアイコンでもちょっと触れるだけで敏感に動いてくれた。しかし完成品に変えた途端、再びダブル・クリックでないとアイコンが反応しないのである。

 しかし、待てよ、私の買った雑誌の付録だけが不具合をもっていたのかもしれない。そう思ったから、今度は別のアスキー社の雑誌を買ってきて、同じIE4を再インストールしたが、結果は同じことであった。

 このIE4には、いうまでもなくネットスケープ・アリゲーターとかコミュニケーターといった競争相手が存在する。そのために開発を急ぎすぎたのではないのか。競争はもとより必然であり、なんとかして勝たなければという気持もつのるであろうが、だからといって未熟な製品が送り出されても困るのだ。

 そこでものは試しと思って、新しいネットスケープ・コミュニケーターをインストールしてみた。しかし、いったん壊れた機械はもとに戻らない。コミュニケーターをもってしてもインターネット頁の表出はできなくなってしまった。本頁でもたびたび書いてきたが、パソコンというやつは何か新しいことをやろうとすると必ずトラブルを起こしてくれる。それでいて次々と新しい製品を開発しては、こちらに突きつけてくる。まことに困ったものである。

 こうしたトラブルを回復するにはどうしたらいいのか、私は今もお手上げのままだが、何か結論にならない結論をいうとすれば、こういう新しいソフトは完成から3か月、できれば半年くらい置いて、そろそろ時代遅れになった頃に導入するのがいいのかもしれない。パソコン雑誌の記事にあおられて、うかうかと乗ってはいけないということであろう。

 まさに失敗であったが、赤ん坊は戻ってこない。やんぬるかな。

(西川渉、97.11.6)

 

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