今夜の蔵相人事に関するニュースを聞いて笑っちゃいました。なぜって、検察出身の元検事だというのだから、これは適任です。イソップ物語の「蛙の王様」ですね。
蛙の世界で、役に立たない丸太ん棒の王様の代わりに神様からつかわされたのが鶴でした。蛙はみんな王に食べられてしまったわけですが、でくの棒の蔵相に代わって赴任したのが鶴の蔵相で、官庁の中の官庁どころか井の中の蛙の官僚諸君も食い殺されぬよう、せいぜい気をつけた方がいいね。
ついでにいうと、馬鹿なマスコミは口をそろえて、新大臣は金融・財政問題には未知数などと、いわずもがなをつけ加えるのはいかなる魂胆か。それならば、官僚の書いた原稿をつっかえながら棒読みする前任者はどうだったのか。それよりも腐った構造を建て直す方が大事であろう。シロアリのような連中が張り切って景気対策などやれば、ますます屋台骨が腐っていくではないか。
今夜のニュースは次も大蔵関連のニュースで、元大蔵官僚の新井将敬が国会で尋問されていた。日興証券に借名口座を開いて不正な取引きをしたという問題だが、本人いわく「自分では法律に違反したという気がない。本当にそういうことがあるんなら自ら政治生命を絶つつもりだ」。この台詞、カッコいいつもりか逃げ口上かは知らぬが、法律に違反しなければ何でもやっていいと思っているところにこの男の限界が見える。法律の定めがあろうとなかろうと、法律以前の道理や道徳を考えたことはないのかね。
それに、自分は利益を要求していないというが、大蔵委員という立場からすれば、日興証券は無言の圧力を感じたはずで、言葉を発したかどうかは問題ではない。おまけに口座を開いた当時は、借名取引きが違法であることを知らなかったという。大蔵官僚とはそんなに無知なのか。現に大蔵委員もやっているようだが、よく勤まるものだね。
道義的にも知能的にも、もはや代議士をやっている資格はない。次は証人喚問といわれ、自民党からは離党を勧告されて、これ以上生き恥をさらすのはやめなさい。
ついでに三つ目の大蔵省だが、昨日朝、霞ヶ関のあの付近を通りかかったところ、門の前にはテレビ局の大きな自動車が停まっていて、何台かのカメラやカメラマン、記者諸君が待機していた。
問題は、あの大げさな城門のような通路に逆鉾のバリケードが置いてあったこと。誰が攻め込んでくるのかは知らぬが、あそこまでやって我が身を守らなければならぬところまで、大蔵省は追い込まれたのでしょう。私腹を肥やして国民を恐れる塀の中、もしくは井の中の大蔵蛙を象徴するような情けない門前の光景でした。
「俺はこの間ノーパンしゃぶしゃぶで、こーんなに沢山食べたぜ」「俺なんざ、借名口座でしこたま儲けたさ」
(西川渉、98.1.30)