<エアライン>

燃料高騰の影響

 今朝の新聞に日本航空や全日空の国内線の廃止や減便が報じられている。燃料高騰に対する合理化方策で、地方空港への影響も大きく、波紋が広がりつつある。

 欧米でも燃料の高騰に対しては、さまざまな対策が講じられている。米デルタ航空は国内線で、2個目の手荷物料金を50ドルに値上げした。3ヵ月前に25ドルで始めたものだが、それを倍額にしたのだ。また3個目以上は1個80ドルを取っていたが、今後は125ドルをいただくという。

 ただし手荷物2個という乗客は2割以下、3個以上はほとんどいない。またファーストクラスや国際線などの乗客は、手荷物2個まで無料である。

 けれども、こうでもしなければ、過去1年間に2倍に上がった燃料費を補うことができないというのがデルタ航空の言い分である。

 

 さらに手荷物料金の値上げどころか、会社同士の提携や合併も対策のひとつになっている。今年4月からはデルタ航空とノースウェスト航空の合併交渉がはじまったし、ユナイッテド航空とコンチネンタル航空も提携している。

 アメリカばかりではない。欧州では英国航空とスペインのイベリア航空との間で合併交渉がはじまった。両社は、かねて緊密な提携関係にあったが、合併すれば中南米への路線が拡大することから、特に英国航空に有利と見られる。しかし合併後も、両社は今まで通りの呼び名で事業を続ける。

 このような合併は、かつて欧州では2004年5月にエールフランスとKLMオランダ航空が一緒になり、2005年3月にルフトハンザ航空がスイスエアを吸収した。最近ではオーストリア航空が株式の43%を売却したいという考えを表明、ルフトハンザ航空がこれを買い取る意向を見せている。またイタリアのアリタリア航空は以前から財政難におちいり、身売り先を探している。

 エアラインの中には空港の特別ラウンジを閉鎖するところも出てきた。ユナイッテッド航空はこれまで世界41ヵ所の空港にラウンジを持っていたが、すでに3ヵ所を閉めており、さらに4ヵ所を閉める予定。

 デルタ航空も国外、国内合わせて47空港に「クラウン・ルーム」と呼ぶ特別待合室を置いていたが、すでに9ヵ所を閉鎖している。最近はアメリカン航空とUSエアウェイズも1ヵ所ずつ閉めた。

 こうした特別ラウンジは、たいていの場合、空港から部屋を借りて運営されている。その賃借料のほかに、スタッフの人件費がかかり、飲み物や食べ物を無償で提供している。またインターネットの接続やシャワーなどのサービスがあり、経費がかさむことは間違いない。

 しかし一方では高い運賃を払ってくれるファーストクラスやビジネスクラスの乗客が他のエアラインへ鞍替えするおそれもあり、エアラインにとっての損得は必ずしも明確ではない。そのうちに、欧米エアラインの手放したラウンジを産油国のエアラインが使うようになり、ますます多くの乗客を集めるのではないか。

 石油の出る国と出ない国で、一般的な経済動向はもちろんのこと、エアライン業界を見るだけでも、明暗は大きく分かれてきた。そのうちに空港施設もエアライン自体も、油の出るアラブ諸国に乗っ取られるのではないか。

 (西川 渉、2008.8.1)

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