REGAグランドを発注

 スイス・エアレスキューREGAがアグスタウェストランドA109グランド双発タービン・ヘリコプターを8機発注したと伝えられる。

 この発注決定に至るまで、REGAはアグスタ社の協力を得ながら、グランドについて徹底的な飛行試験を繰り返した。その結果、同機は出力の余裕が大きいため、標高の高い場所や気温の高いときの運航に適するという結論に達した。また、高速性能を生かして、長距離の病院間搬送にも使える。

 REGAは1989年、アルプス山岳地での救助と救急のためにアグスタA109K2を選定した。しかし10年以上が経過して3年ほど前だったか、ユーロコプターEC145が5機採用され、次のREGA主力機になるかと思われた。それが、ここで再びアグスタ機が巻き返すことになったのである。REGAは日常の救急業務もさることながら、切り立つような山岳地の遭難救助に定評がある。それに使われるグランドは、今後の山岳救助機として評価を高めることになるであろう。

 グランドは現用A109とほとんど同じような外観を持ちながら、エンジンとトランスミッションを強化、総重量を増やすと共に、胴体長を20cmほど延ばしてキャビン容積を拡大した。にもかかわらずローター直径と全長はわずかに小さくなり、幅1.4mの大きなスライディング・ドアがついて、コンパクトで高速、強力な双発ヘリコプターとなっている。

 なおアグスタA109は、昨年5月3日、これは日本での話だが、連休中に静岡県警の機体が墜落事故を起こした。そのため日本での将来が危惧されたが、原因は機材上の不具合ではなく燃料切れであることが判明した。それにより警察庁は2005年度、代替機を含めてA109Eを3機購入した。さらに2006年度も、入札の結果4機の契約が成立し、年度内に納入の予定となっている。これで警察のA109は11機になる。

 引込み脚を持つA109の高速性能は、警察機として、逃走する車の追跡には最適であろう。もっとも映画と違って、そんな場面が現実にあるかどうかは知らない。警察向けのA109パワーには救助用の吊上げホイスト、ストレッチャー、カーゴフック、サーチライト、スノースキーなどが装備されている。

 グランドとA109との主要データの違いは下表の通り。

    

グランド

A109パワー

総重量(kg)

3175

3000

エンジン

PW207C

PW206C

離陸出力(shp)

735×2

640×2

トランスミッション(shp)

960

900

最大座席数

8

8

最大速度(km/h)

311

311

キャビン容積(立米)

5.55

5.15

胴体長(m)

11.65

11.45

全長(m)

12.96

13.04

ローター直径(m)

10.83

11.00

(西川 渉、2006.9.14)

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