<フランス海軍>

ヘリコプター強襲艦ミストラルを見る

 フランス海軍の強襲揚陸艦「ミストラル」(Mistral)が来日、艦内見学の招きを受けたので、去る4月9日東京湾の若洲埠頭に出かけた。総トン数21,300t、全長200mの巨大なヘリコプター空母である。埠頭に近づくと前方に大きな倉庫のような建物が見えるかと思ったが、それが軍艦であった。

 この大型艦に大型ヘリコプター16機、小型ヘリコプターならば30機ほど搭載して、敵地への上陸作戦にあたるらしい。加えて上陸用舟艇4隻もしくはホバークラフト2隻をも搭載するという。

 ミストラルが完成してフランス海軍に引渡されたのは2006年2月というから、まだ新しい艦である。機能的にもきわめて新しく、最新の電子装備をもち、広範囲の監視レーダーや通信システムを備え、上陸作戦にあたっては作戦本部となって指揮を執る。2006年7月には就航後まもなく、イスラエルとレバノンの紛争でレバノン沿岸に出撃、フランス人の救出にも当たった。つまり上陸部隊を敵地へ送りこむ代わりに、避難してきた民間人を連れ戻すという逆の任務にも使うことができる。

 16機の搭載が可能という大型ヘリコプターはNH90、SA330ピューマ、AS532クーガーまたはAS665タイガー攻撃機など。甲板下の格納庫は広さ1,800u、上甲板のフライトデッキは6機のヘリコプターが同時に発着できる。

 乗組員は士官20人、水兵その他160人。ほかに上陸部隊の兵員450人を乗せて45日間の航海が可能。最大速度は19ノット、巡航14ノットで11,000海里の航続性能を持つ。

 艦内には負傷兵の治療にあたる病院もあって、手術室は2カ所、入院ベッド数は69床。大勢の負傷者が出た場合は、格納庫に患者を収容する。

 火器は対空ミサイルの発射装置が2基。6km離れた目標へ赤外線誘導が可能。また30ミリ砲2基、12.7ミリ機銃4基を備える。

 さらにミストラルはフランス海軍初の完全電子艦ともいわれ、最大180km範囲の索敵能力を持ち、防御のためには半径60kmの範囲に接近した敵潜水艦や航空機を探知、反撃することができる。 


船体横腹にあいた搭乗口へかかるタラップ


飛行甲板すぐ下の格納庫。ガランとしていてヘリコプターはほとんど積んでいなかった。
むろん日本へは戦争にきたわけではないので、必要最小限にとどめたのだろう。


2機のガゼル・ヘリコプター


……そしてアルウェットVが1機。
以上3機だけで、しかも旧式のヘリコプターばかりであることに驚かされる。


新しいのは偵察用の無人機オルカのみ。


飛行甲板と艦橋


最上部の飛行管制室から見た甲板。全長200mの甲板に発着点は6ヵ所。


艦内では鳥のもも肉を焼いたのと赤ワインの昼食をご馳走になって戻ってきた。

(西川 渉、2008.4.17)

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