ヘリエキスポ2001速報

 

 今年の国際ヘリコプター協会(HAI)年次大会「ヘリエキスポ2001」はロサンゼルス南郊のアナハイムで開催された。2月11日から3日間の参加総数は約12,500人と発表された。昨年ラスベガスで開かれた大会より2,000人ほど少なく、いささか寂しいところもあったが、新機種の開発に関してはいくつかの新しい動きが見られた。


(ヘリエキスポが開かれたアナハイム・コンベンション・センター。
昨夏2億ドルをかけて外観を一新、正面は総ガラス張りとなって内部も広く明るく使いやすくなった)

 

 アグスタ社の開発と生産意欲は他社に抜きん出て旺盛なものが感じられた。ベル社との間で共同開発をしてきたAB139中型双発タービン・ヘリコプターも2月3日初飛行した。1999年のパリ航空ショーで計画が公表されてからわずか19か月後のことである。


(AB139ヘリコプターの初飛行)

 

 さらにアグスタ社は、この会期中に英ウェストランド社との合併手続きが完了し、「アグスタウェストランド」社となった。合併後の売上高は21億ドルと想定され、先に仏アエロスパシアル社と独MBB社が合併したユーロコプター社を上回るという。しかもアグスタ社はベル社との関係が深く、AB139はもとより、BA609ティルトローターの開発にも参加しているところから、ユーロコプター社にとっては手強い競争相手が出現したことになる。

 

 しかしユーロコプター社も負けてはいない。これまで極秘のうちに開発してきたEC130B4ヘリコプターを突如公開してみせた。この軽単発機がHAI大会の会場でヴェールをぬいだときには、すでに欧州と米国の型式証明も取得、春のうちに4機が引渡されることになっていた。ここに展示された機体は、その場でブルーハワイアン・ヘリコプター社に引渡された。パイロット1人のほかに7人の乗客をのせてハワイの遊覧飛行に使われる。


(EC130小型単発ヘリコプター)

 

 ユーロコプター社の2000年実績は、引渡し数が289機で前年の241機に対して2割増しとなった。また受注数は大量531機に達した。その半数近い243機が軍用NH90輸送機である。昨年の受注実績は382機で、うち160機がタイガー攻撃機であった。これでユーロコプター社は、NH90とタイガーの大量注文を確保し、向こう10年間は安泰と見られる。しかし売上高は55%が軍需以外の民間および政府機関(警察、消防など)で、必ずしも軍用機に傾斜しているわけではないという。

 

 ロビンソン・ヘリコプター社も好調である。2000年中の売上高は同社初めて1億ドルに達し、機体の生産数は1日1機を超えて390機に達した。うち126機はR22(複座)、264機はR44(4席)。R44は昨年から操縦系統に油圧装置をつけて操縦操作が容易になって人気が高まった。引渡し数は前年の76%増という。また最近1,000号機が出来上がり、それが今回の会場に展示されていた。


(売れゆき好調のロビンソンR44)

 

 シコルスキー社ではストレッチ型のS-92が初飛行した。3日前の2月8日のことである。同機は胴体右側のドア開口部を幅50インチまで広げるために胴体を16インチ延ばし、尾部ローターのパイロンを低くして機体重量の増加を相殺、水平安定板を左側から右側に移したもの。このストレッチ型は原型5号機――1号機は地上試験のみに使われ、2〜3号機は最近までに合わせて600時間の試験飛行をしている。4号機は目下組み立て中。S-92の型式証明取得は来年なかばの予定。


(シコルスキーS-92)

 

 MDヘリコプター社は、MDエクスプローラーの出力増強を計画中。これは現用PW206AおよびPW206Eエンジンに代わって、PW207Eエンジンを装備するもので、今年9月から実用化されるという。PW207Eは離陸出力710shpで現用エンジンの11%増、2.5分間の片発緊急出力は800shpで8.5%増になる。

 

 エンストローム社が開発してきたモデル480BがFAAの型式証明を取得した。2月9日――2日前のことである。エンストローム480Bは最も安い小型タービン機として売り出される予定で、エンジンはRRアリソン250-C20Wターボシャフト(420shp)を289shpに減格使用する。基本価格は58万ドルで、他の競合機にくらべて最も安いという。


(エンストローム480B)

 

 シュワイザー333も昨年9月にFAAの型式証明を取得した新しい小型タービン機である。エンジンは250-C20Wを230shpに減格している。従来の330タービン機に対して、ローター・ブレードの翼型が改められて揚力が増し、有効搭載量は3割増となった。価格は607,500ドル。これまでに6機が警察などに引渡されているが、今年は10機の333と40機の330Cピストン機を生産する計画。

 

 2000年はカマン社の業績も向上した。今大会での話題は、KーMAXを米ペトロリアム・ヘリコプター社(PHI)に引渡したことで、PHIはこれを台湾で水力発電所と送電線の建設工事に使う計画。おそらくは2〜3機が必要になるだろうという。なおカマン社は海兵隊向けにK-MAX無人機を提案している。戦場の危険な最前線に弾薬や食糧などの補給輸送をするのが目的。

 

 ベル・ヘリコプター社は2000年中に179機を引渡した。うち36機が軍用機、143機が民間機。最も多いのは62機を数えた407単発機である。

(西川渉、2001.2.19)

(「HAI篇」へ)  (表紙へ戻る)