<HELI-EXPO 2005>

S-76C++とS-76D

  

 シコルスキー社は2月6日、HAI大会の会場でS-76C++とS-76Dの開発計画を明らかにした。

 S-76C++は現用S-76C+の改良型で、エンジン出力を上げ、新しいギアボックスをつけ、ペイロードが増し、速度が上がり、航続距離が伸びる。またHUMSを取りつけて、ローターのバランスやトランスミッション系統を常にモニターし、整備費の削減につながる。

 エンジンはターボメカ2S2で、これまでの2Sに比べて出力が5〜6%増加、高温時にカテゴリーAで飛ぶときの総重量が150〜180kgほど増加する。またエンジンの空気取入れ口には異物濾過装置がつくが、これで出力が下がるようなことはない。

 キャビン内部の騒音はヘリコプター・サイレンサーと静寂ギアボックスによって、4デシベルほど下がり、旅客機と同程度になる。この静かなギアボックスはギアの形と仕上げの状態を鏡面のように極めてなめらかにしたもので、これで騒音が減ると共に、ギアの寿命と信頼性が増した。

 S-76C++の価格はS-76C+と変わらず、今年末頃から引渡しがはじまる。


S-76C++のモックアップ

 こうしたS-76C++を基本として、シコルスキー社はS-76Dの具体化にも取りかかった。エンジンはターボメカに代わって、全く新しいPW210S(1,000shp)が2基。主ローターも高揚力の新しい複合材ブレードに変わり、双方相まって高温時の離陸重量は635kgほど増加する。

 ローターブレードの翼型や平面形はコマンチの開発研究から得られた技術によるもの。尾部ローターも騒音を減らすための新設計になる。これで離陸時の騒音は2デシベル、上空通過時の騒音は1.5デシベル少なくなる。その結果、グランドキャニオンの遊覧機に適用される特別騒音規制にも適合する。

 またS-76Dは、S-92と同じ防氷装備を持つ。機体外観もいっそう流線型化するもよう。

 引渡し開始は2008年なかばの目標。

 これらの新しい高出力型のS-76は、競争相手のEC155やAB139に対抗するものとなる。S-76C++は現在12機の注文を受けているが、今年末から3年ほど生産されたのち、S-76Dに替わる。

 2004年中にS-76は31機が引渡された。このうち21機が海洋石油開発向けであった。最近までの生産数は総計615機になる。


現用S-76C+

(西川 渉、2005.2.22)

 

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