<HELI-EXPO 2005>

ロビンソン・ヘリコプター

  

 ロビンソン・ヘリコプター社は昨年690機のヘリコプターを生産し、ヘリコプターメーカーの中では前年に続いて世界最多の機数となった。

 フランク・ロビンソン会長は「より良いものを、より安く売る」のがコツだと語るが、現実には決してやさしいことではない。前年は422機だったというから、1.6倍の伸びである。

 690機の内訳は、R44レイバンUが361機、標準型R44が95機、2人乗りのR22が234機。


ヘリエクスポ会場に展示されたR44

 こうした機数の伸びから、早くも年間1千機になるのはいつかといった話題が出ている。むろんフランク・ロビンソン会長は、そんなことは分からないし、考えてもいないというが。

 また多くのメーカーが中国市場をめざし、中国での生産を始めようとしているが、ロビンソン社はどうするつもりかという問題もある。これに対し、ロビンソン会長は「中国での生産は考えていない。手続きや調整が多くて煩雑だし、ヘリコプターの製造に必要な資器材の供給にも問題がある」と語っている。

 今のところは、同社工場のある「ロサンゼルスが最適だ。気象条件が好くて飛行日和(びより)が多く、労働者の質も高い。また土地が広く、周辺には関連産業も多い。輸出にも好適な立地条件だ」

 ロビンソン氏が昔から追求してきたのはパーソナル・ヘリコプターである。今もその目標は変わらず、「品質が良く、信頼性の高い最良の製品を最小限のコストで生産するための努力をしている」

 パーソナル・ヘリコプターは、構造が簡潔で、軽量で、整備の手間がかからず、燃費が少なく、したがって経済的で、高速で飛べるようなものが望ましい。ロビンソン氏としては1970年代初めの会社発足の当時からそれをめざしてきたが、今30年を経過してようやく実現に近づいたといえるかもしれない。

 将来に向かっては、6人乗りのR66や、8人乗りのR88も考えられる。またエンジンも今のピストンに代わってタービンやディーゼルの採用もあり得るが、具体的な計画はまだ何も表面化していない。むろん予備的な設計研究は絶えず続けている。

 ヘリエクスポの前日、ロビンソン社を訪ねる機会があった。以下の写真は、そのもようである。

 ロビンソン社はロサンゼルス郊外のトーランス空港の一角にある。カリフォルニアの真っ青な空に建物の青と白がまぶしい。

 この瀟洒な玄関の背後に、思いがけぬ広大な工場が広がり、1,100人の従業員が1日2機のヘリコプターを忙しく製作していた。今年中には1,300人になる予定。

 出荷直前の完成機が並ぶ。なんだかおもちゃ工場に行ったような光景でもある。最近までの販売機数はR22が10,000機以上、R44が3,800機以上。

 やっぱりおもちゃが並んでいるように見えるが、本物のヘリコプターである。ロビンソン社では残念ながら、工場の中は撮影禁止で、ここだけしか写真が撮れなかった。この中に日本向けの機体もあって、「JA――」という登録記号もついていた。

 国外からの注文は一時、日本が最も多かったが、最近はイギリス、オーストラリア、南アフリカが多いそうである。いずれもイギリス連邦諸国だが、何か理由があるのだろうか。

 販売代理店(ディーラー)は世界中で100社以上。うち3社は日本にある。またサービス・センターは300ヵ所以上。車と同じような販売組織である。

 見学者の質問に答えるフランク・ロビンソン会長。御歳75歳。良いヘリコプターとは何かという質問に対し「Symple, Reliable, Reasonable Price」という答えが返ってきた。

(西川 渉、2005.3.3)

 

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