<HAI年次大会>

シコルスキーX2実験機を初公開

 

 

 シコルスキー社はHAI大会の会場で未来型ヘリコプターX2技術実験機を初公開した。2つの座席が前後に並んだタンデム複座の同機は二重反転ローターをもち、尾部には推進用のプロペラがつく。エンジンはロールスロイスとハニウェウルの共同開発になるT800-LHT-801(1,450shp)が1基。

 この公開にあたって、シコルスキー社のトップは「これこそシコルスキーの未来をめざすパイオニア精神を象徴するもの」として、次のように語った。

 この実験機はすでに20時間ほどの地上運転をしており、HAI大会で展示するために試運転を中断しなければ、今ごろは初飛行していたはず。こうした形式のヘリコプターが実用になれば、ヘリコプターの世界は大きく変わるだろう。そのために、われわれは着実に実験作業を進めてゆきたい。

 もとよりX2はあくまで実験機であって、これ自体を実用化するわけではない。が、実際の飛行によって460〜490km/hの高速巡航、低速時のすぐれた操作性とホバリング能力、オートローテイションの安全性、そして低速から高速飛行へのスムーズな移行などを確かめたい。

 こうした実験目標を達成するために、X2はフライ・バイ・ワイヤ操縦システム、アクティブ防振装置など、さまざまな新しい技術を採り入れている。

 特に重要な問題は、複合材の主ローターブレードが高速飛行中に音速を超えないようにすることで、そのための自動制御装置をつけている。これはX2が速度388km/hに達すると自動的に主ローターの回転をゆるめ、その代わりに尾部の推進プロペラの回転を上げる。そして前進速度が490km/hになると主ローターの回転速度を80%まで下げる。このとき推進プロペラに送られる出力は900shpまで上がるが、この出力は固定翼機のピラタスPC-12に匹敵するほどである。


X2の原理にもとづく大型高速機

 シコルスキーX2計画がはじまったのは2005年6月であった。以来2年半をかけて原型機を製作し、これから同機が理論通りに飛ぶかどうか、将来実用化できるかどうかを試すことになる。実用になるとすれば、先ずはスーパーピューマ級の15〜19人乗りくらいのヘリコプターを考える。そして将来は100トン級の大型ヘリコプターへ進むという。


X2大型クレーン機

(西川 渉、2008.2.28)

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