速報「HAIヘリエキスポ2000」

 HAI(国際ヘリコプター協会)の年次大会「ヘリエキスポ2000」は去る1月24〜26日の3日間、ラスベガスで開催された。それを見るだけ見ると後は脇目もふらず昨28日夕刻、一目散に戻ってきた。早くここに報告を書かねばと思ったからで、取りあえず会場で拾った主な話題を箇条書きのメモの形で掲載しておきたい。

 詳細はこれから書くところだが、2月下旬発売の『航空情報』誌(4月号)に写真と共に載る予定である。


(会場となったラスベガス・コンベンション・センター)

 

 シコルスキーS-92に初の注文が出た。カナダのバンクーバーで定期便を運航しているヘリ・ジェット社から1機、同じくカナダの海底油田開発の支援に当たっているクーガーヘリコプター社から5機。これでシコルスキー社は安堵しただろうが、傍観者のわれわれもホッとした。何しろ、これだけの大型機である。開発費にいくらかかっているのかは知らぬが、買い手がつかなかったら大変だ。 

 ベル427の量産1号機が引渡された。受領したのは米ペトロリアム・ヘリコプター社(PHI)。同機は去る12月にカナダ運輸省の型式証明を取得していたが、FAAの型式証明が交付されたのは引渡しの1分前であった。427の受注数は現在80機。 

 伊アグスタ社がベル社の協力を得て開発中のAB139中型ヘリコプターは、豪州ヘリテック・インダストリー社から1機の注文を受けた。昨年秋には英ブリストウ・ヘリコプター社から2機の注文を受けている。また近く軍用機として大量注文を受ける見こみと、アグスタ社はこのところ強気一点張りの姿勢。 


(ベル/アグスタ社が開発中の2機種――いずれもモックアップだが、
左がBA609ティルトローター、右がAB139)

 

 アグスタ社が開発してきたA119コアラ単発タービン機は昨年末、年の暮れも押し詰まった12月30日にイタリア航空局の型式証明を取得した。またFAAの型式証明はこの2月に取れる見こみで、量産機の引渡し開始は5月の予定。8人乗りのコアラは1,000shp以上の出力を持ち、140ktの高速で飛べる。なお、アグスタ社は99年中に64機のヘリコプターを引渡した。うち45機が民間向け。 
 余談ながら、彼らは、年末ぎりぎりまで仕事をしているらしい。その代り西洋にはクリスマスの休みがあるというが、日本も平成に入って同じ時期に天皇誕生日ができたから、これは実質上のクリスマス休暇である。日本人は「ハッピーマンデー」だの、いろんな理屈をつけて休日を増やし、だんだん働かなくなった。これでは不況から立ち上がれないのも当然だし、働かなくなったとどのつまりが大量の失業者の出現であろう。
 さらに余談を重ねると、かつて日本人は働き過ぎだといわれ、それを真に受けてもっと休めとか、遊べなどとあおり立てる評論家が多かった(たとえば竹村健一)。人間は本来怠けものだから、そんなことを言われなくても放っておけば仕事をしなくなる。つまりかけ声のかけ方が逆で、その結果がこのていたらくだが、今だって国民はもっと金を使えといい、赤字国債もやむを得ないという。これも逆のかけ声だから10年もたてば、もっと酷い結果になっているだろう。

 ユーロコプター社は昨年1年間に382機の注文を受けた。この中には160機のタイガー攻撃機が含まれる。また、引渡し数は241機で、民間向け新製機としては世界市場の45%を占めるという。 

 ユーロコプターEC155が初めてアメリカに輸入され、『USニューズ・アンド・ワールド・リポート』誌と『ニューヨーク・デイリー・ニュース』紙から、それぞれ1機ずつVIP専用のビジネス機として注文を受けた。 

 ユーロコプター社が川崎重工業と共同開発中のEC145については、何の発表もなかった。記者団の質問にも、同社はまだ発表の時期ではないというのみ。EC145はBK117の改良型で、胴体幅が広くなり、座席数が増えている。すでに昨年6月に初飛行したはずだが、まだ写真も何も公表されてなく、記者団の興味と疑問を掻き立てるばかり。フランスの民間警備隊からは40機の大量注文を受け、2001年末頃から引渡しに入るとも伝えられるのだが。 

 MDヘリコプター社は、昨年2月にオランダのRDMグループが買い取って1年。この間に37機を生産した。うち19機がMDエクスプローラー。今年の生産目標は65機。また、この1年間の確定受注数は50機であった。一時は「死に体」といわれたMDヘリコプター社だが、今や完全に息を吹き返したとみえる。 

 シュワイザー社は新しいモデル333(トリプル3)の開発計画を公表した。現用330小型単発タービン機の改良型で、ロールスロイス・アリソン250-C20Wを装備して出力が強化され、ローターブレードも新しくなる。これにより総重量が増加して有効搭載量は3割増となり、飛行性能も向上する。巡航速度は105kt以上。機体価格は595,000ドル。今の330より12,000ドルほど高いだけである。すでに2機の注文も受けており、今年4月から引渡しに入る予定。なおシュワイザー社の99年中の引渡し数はモデル300C小型ピストン機も合わせて40機であった。 

 ロビンソン社は新しい油圧操縦装置をつけたR44を公開した。同機は今年の引渡し分だけで119機の注文を受けている。昨年の生産実績はR44(4席)が150機、R22(2席)が128機で、合わせて278機。今や機数では世界最大のヘリコプター・メーカーとなった。


(混雑する会場――今年の入場者は3日間で過去最大の14,000人以上。
左手前はユーロコプターEC155)
 

(西川渉、2000.1.29)

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