<HELI-EXPO 2006>

シコルスキー・エアクラフト

 シコルスキー社はS-92に加えて、2種類のS-76を展示した。一つはエアロジスティックに引渡されたS-76C++で、35機を発注しているうちの1機。S-76の引渡し数は今年1月末、1979年の引渡し開始以来、600機となった。S-76は現在世界59ヵ国で飛んでおり、累計飛行時間は400万時間を超える。

 もうひとつはS-76Dのモックアップ。PW210Sを2基装備して2008年に実用化される見こみ。


エアロジスティック社に引渡されたS-76C++

 シコルスキーS-76C++は今年1月3日、FAAの型式証明を取得した。最近までに60機以上の注文を受けており、PHIなどへ引渡しがはじまっている。ターボメカ・アリエル2S2エンジンを装備して出力が強化され、カテゴリーAでの離着陸に際してはペイロードが160〜200kgほど増加、高温・高地での飛行性能も良くなった。主ギアボックスは音が静かになっている。

 なお本機はニューヨークに新しい旅客輸送路線を開設するUSヘリコプター社からも4機の注文を受けている。この3月からアメリカン航空と組んで、マンハッタンとケネディ空港その他の空港との間でヘリコプター定期便を飛ばす計画。当面はS-76Bを使うが、来年からS-76C++の引渡しにともない、機種を切り替える。

 アメリカン航空の乗客はウォール街ヘリポートで搭乗手続きをすませ、最終目的地までのボーディングパスや荷物の引換証を貰ってケネディ空港のターミナル9まで直接8分間で飛行し、そのまま旅客機に乗り込むことができる。

 4月からはマンハッタンの34丁目ヘリポートからも飛べるようにし、空港もラガーディア空港やニューアーク空港へ広げる予定。


S-76Dのモックアップ

 S-76DはS-76C++を基本として、大幅改良を加えるもの。エンジンをPW210に換装し、主ローターブレードは新しい複合材製となり、尾部ローターも騒音が小さくなる。防氷装備も充分で、既知の氷結気象条件の中でも飛ぶことができる。2008年に完成の予定。


シコルスキーS-92

 S-92は、昨年の米大統領専用機の競争ではUS101に敗れたけれども、同機に対する人びとの関心は衰えていない。いつも多くの人が、機内に入って説明を受けていた。

 シコルスキーS-92は乗客19人乗り。目下メキシコ湾のPHIと北海のノルスク・ヘリコプター社で石油開発の支援に使われている。PHIはすでに6機を運航中で、1号機の飛行時間は1,000時間を超えた。またノルクも1月2日から3機目の運航を開始した。防氷装備が完備しているため、北海のようなところでも安全に運航することができる。

 またカナダ政府は28機を発注しており、CH-148サイクロンの呼称で、捜索救難、人員輸送、貨物輸送、戦術輸送、救護搬送などに使う予定。

 同じHH-92をシコルスキー社は米空軍にも戦闘救難機として提案している。

(西川 渉、2006.3.9)

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