<HELI-EXPO 2006>

ユーロコプター

 ユーロコプター社は2005年、401機の注文を獲得した。金額にして17億ドルに相当する。401機のうちほぼ7割は外国からの受注である。また引渡し数は334機であった。機種別の内訳は下表のとおり。

    

受注数

引渡し数

タイガー

6

12

NH90

12

0

スーパーピューマ/EC225

14

18

ドーファン/EC155

25

28

エキュレイユ・ファミリー

193

153

EC145

20

17

EC135/EC635

87

76

EC120

44

30

合    計

401

334


EC145

 EC145は昨年19機が引渡されたが、今年は25機の生産予定。EC145の昨年の受注数は20機であった。そのほとんどが救急医療に使われる。

 最近までの累計受注数は約95機で、そのうち75機が引渡されている。特に救急医療機としての受注が多く、警察や政府機関のテロ対策機という任務も多い。リトアニアの国境警備にも使われている。また米陸軍の多用途機(LUH)としても提案されている。

 ロンドン警視庁はEC145を3機発注した。現用2機のAS355に取って代わり、捜査や追跡などの警察業務と共に、昨年7月のロンドン爆破事件のようなテロ対策にもあたる。


迷彩塗装のEC135

 上の写真はユーロコプター社のブースに展示されたニューオーリンズの石油ガス開発会社テイラーエネルギー社のEC135。なんだかロシアの攻撃ヘリコプターのような迷彩塗装だが、別に意味はない。同社のオーナーが青色が好きだったそうで、今は故人である。

 この会社はメキシコ湾で油田開発にあたっており、このEC135のほかに4機のEC130を保有する。いずれも同じような青の迷彩塗装らしい。間もなくEC145を発注する予定とか。

 メキシコ湾では現在、650機近いヘリコプターが使われており、毎日9,000回の飛行がおこなわれている。油田開発のために海上で働く人は35,000人に上る。

 EC135は目下、出力増強作業が進んでいる。今のエンジンをターボメカ・アリウス2B2またはPW206B2に換装するもので、EC135T2iまたはP2iと呼ぶことになる。旧来のT2またはP2からの換装も可能。

 これで最大離陸重量は75kg増の2,910kgとなる。逆に機体重量が減るため、有効搭載量は80〜90kg増加する。この新しいEC135の引渡しは今年9月からはじまる予定。

 EC135は最近までの総受注数が500機を超えた。うち90機近くが2005年中の受注数である。

 EC135は、米国最大のヘリコプター救急事業を展開しているエア・メソッド社から15機の予約注文を受けた。さらにヘリコプター救急大手のCJシステムズ社からも10機のEC135を受注。CJシステムズは現在115機の航空機を運航しているが、そのうち41機はEC135である。

 ユーロコプター社は中国および韓国との間で、新しい中・大型への共同開発を進めることになった。

 中国との開発計画は昨年12月に調印されたEC175で、総重量6〜7トン・クラスのヘリコプター。中国ではZ15と呼ばれる。乗客数は最大16人。主ローターは5枚ブレードで、胴体は衝撃吸収能力を持つ。要人輸送、救急搬送、石油開発、消防活動などの多用途機として、アグスタウェストランドAW139と競合する。

 今後の開発費は両国半分ずつ負担する。開発作業は去る1月9日マリニアンヌに設計オフィスが開設され、フランスと中国の技術者60人が配置された。開発段階は5年間で、この間2009年に初飛行し、2011年までに型式証明取得の予定。なお中国側Z15は翌2012年に型式証明を取る。

 量産は両国でおこなうが、中国内だけで20年間に280機の需要が予測されている。またそれ以外の国では400機の需要が見込まれ、合わせて680機の総需要というのが、ユーロコプター社の見方。


HAI大会の会場でEC175の説明に使われたスライド画面

 韓国との共同開発計画は、韓国ヘリコプター・プログラム(KHP)と呼ばれるもので、韓国陸軍向けの8トン級ヘリコプター。

 ユーロコプター社と韓国エアロスペース工業(KAI)との共同作業で、2005年12月13日、調印された。

 開発期間は6年間。韓国からマリニアンヌに40人の技術者が派遣され、間もなく作業がはじまる。ユーロコプター社は現用AS532L1クーガーを基本として、ドライブ系統とオートパイロットを開発する。

 2011年までに原型6機を製作するが、1号機は2009年に初飛行の予定。韓国陸軍は245機の調達を予定している。


EC175完成予想図

(西川 渉、2006.3.13)

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