<ヘリコプター開発>
2014年をふり返る この1年間、ヘリコプターの開発に関して、どんなニュースが伝えられたか。年末にあたって簡単にふり返り、整理しておきたい。
AW189型式証明取得 2014年2月、イタリアのアグスタウェストランドAW189が型式証明を取得した。人気の高いAW139よりも一回り大きく、総重量8.3トンで18人乗り。GE CT7-2E1ターボシャフト・エンジン(1,625shp)2基を装備する。
英ブリストウ社はこれを15機発注しており、最初の2機は2015年4月から英国政府との契約により沿岸の捜索救難機として使用する。大型で余裕があるため、燃料タンク容量を増やして航続4時間の飛行性能をもたせ、巡航速度287q/hで洋上370kmの沖合いまで進出できる。遭難者の吊り上げ用には二重ホイストを装備、機内にはストレッチャー2人分と医療スタッフや救助員6人の搭載が可能。また操縦系統には自動捜索システムやフライト・マネジメント・システムを組みこんでいる。
この捜索救難型は最近、欧州航空安全庁(EASA)から型式証明を取得、総重量も8.6トンとなり、ペイロードが300kg増加した。
ブリストウ社は将来、AW189を海洋石油開発の支援飛行にも使う予定。
AW189
CH-53Kロールアウト 5月、シコルスキーCH-53Kキング・スタリオン大型ヘリコプターが完成、ロールアウトした。現用CH-53Eスーパースタリオンの発達型で、新しいGE-408 (7,500shp)エンジン3基を装備、出力は1.5倍、燃料効率は1.2倍に改善された。主ローターも12%ほど大きい。これで12トンの貨物搭載が可能となり、海上200kmを飛んで海兵隊の上陸作戦を支援する。操縦系統はフライ・バイ・ワイア。初飛行は2015年の予定。
海兵隊は、このCH-53Kを200機導入し、2050年代まで使用する計画。1機あたりの価格は約7,000万ドルとか。
公開されたCH-53K
米大統領機VXX 5月、米海軍は大統領専用ヘリコプターVXXにシコルスキーS-92の採用を決めた。現用VH-3およびVH-60VIPに代わるもので、当面6機を試作、1号機を2016年までに完成させる。契約価額は12億4000万ドル(約1700億円)。実用化されるのは2020年。最終的には21機の調達が計画されている。
シコルスキー社が開発する新しい大統領機
JMRの試作決定 8月、米陸軍は未来型垂直離着陸機(FVL)の試作にベルV-280ティルトローター機と、シコルスキー/ボーイングSB-1同軸反転コンパウンド機を選定した。FVLは新しい技術、新しい設計、新しい材料によって、現用機よりも高速、長航続、大ペイロードのロータークラフトを実現させ、高い信頼性、整備性、操縦性、経済性を目的とするもの。
この2機種は2017年までに試作機が飛行し、どちらか一方を採用する。実用機は約4,000機を調達、2030年頃から現用UH-60多用途機、AH-64アパッチ攻撃機、 CH-47チヌーク、OH-58カイオワに取って代わるという計画。
ベルV-280ティルトローター機
スイス・マレンコ・ヘリコプター 10月2日、スイスのマレンコSH09ヘリコプターが初飛行した。ハニウェルHTS900タービン・エンジンを装備する単発機で、5〜8人乗り。総重量は2,500kg。高温・高地性能にすぐれ、巡航速度270q/hで800kmの航続性能をもつ。騒音も小さいという。2016年には量産化の計画。
マレンコ・ヘリコプターの初飛行
S-97レイダー 10月2日、シコルスキーS-97レイダー・ヘリコプターが公開された。同軸反転ローターの武装スカウト機で、430q/hの高速性能を持ち、2014年末までに初飛行の予定。
将来は、現用OH-58カイオワにとって代わることをめざしている。
シコルスキーS-97
ベル505JRX 11月11日、ベル社の新しい5人乗り軽ヘリコプター、モデル505ジェットレンジャーXが初飛行した。フランス製のチュルボメカ・アリウス2Rエンジン(504shp)1基を装備している。
いま世界中で広く使われているベル206ジェットレンジャーの後継となるもので、2015年に型式証明を取り、2016年から量産化の予定。すでに240機以上の注文を受けている。
ジェットレンジャーX(西川 渉、2014.12.30)
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