<本のしおり>

属国憲法のままでいいのか

 アメリカ大統領が誰になるかはわからぬが、最も有力なのは悪評高いドナルド・トランプであろう。そうなったときは日本にもさまざまな影響が及ぶにちがいない。

 最大の影響は国防問題で、もはやアメリカは日本を保護しなくなるのではないか。日米同盟は継続するにしても、日本の防衛力は日本みずから整備しなくてはならないということになろう。そんな危機にあたって、日本がこれまで通り平和呆けのままでいいのか。

 先日も、安保法制の審議がつづいていた国会の周りで、反対派の連中が幟やプラカードを立てて「戦争反対」「戦争はごめん」などと叫んでいたが、これは国会ではなく麻布の中国大使館前でやるべきだ、と書くのは『いま誇るべき日本人の精神』(加瀬英明、ベスト新書)である。

 無防備の日本を虎視眈々と狙う中国では、習近平か臭禁屁かは知らぬが、「五千年の偉大な中華文明の復興」を煽り立て、公的な場でもしばしば「戦争の準備を進めよ」と命令を下している。このような戦争準備を絶叫している国はアジアでは中国と北朝鮮しかない。

 対する日本は、平和さえ願っていれば平和がもたらされると信じる人が多い。これはインチキ祈祷師に騙されているからだ。憲法第9条がそれほど素晴らしいものであれば、中国の侵略を受けているインドやフィリピンも、第9条のような条項を憲法に盛りこめばいいはずだが、無論そんなことで霊験あらたかというわけにはゆかない。祈祷師集団の言う「平和憲法」は、憲法ではなく「平和念仏」といったほうがいい。つまり日本の現状は憲法のご利益ではなくて、アメリカによる軍事保護のおかげに過ぎない。これは平和ボケというよりは「保護ボケ」を患っているのである。

 この呆けた患者たちが後生大事にしている憲法は「属国憲法」にほかならない。軍隊を「自衛隊」といい、属国憲法を「平和憲法」といってきたのもボケているからだ。

 このようなボケ患者を、アメリカはいつまで保護してくれるのか。すでに前から疑問はあったが、トランプ大統領が誕生すれば現実の問題となるであろう。

 この本が書くように、中国は自分中心の国である。自ら「中華」と称していることでも分かるように、その基本は「自分のものは自分のもの。他人のものも自分のもの」といった泥棒根性である。

 これが近隣諸国に対して多大な迷惑と被害を及ぼしてきた。自己中心的な傲慢ぶりが、他のアジア人を見下し、周辺の国々を侵略してきたからである。しかし、いずれ中国に内部崩壊の危機が迫るであろう。それを著者は2017年と予言するが、そのときは最後のあがきから尖閣列島に襲いかかる可能性が高い。

 そのときアメリカは日本を守ってくれるのか。トランプはどうしてくれるか。「ほっとけ」という公算が強い。日本はこれまでアメリカの膝で眠りつづけてきた。したがって尖閣諸島を守る力すら持っていない。日本の行く手は決して安泰ではないのだ。

 そこで憲法改正問題が出てくるのは当然の成りゆきである。憲法が公布されたのは1946年11月3日だが、その数日後には朝日新聞ですら社説で「ひとつの憲法を永遠に保持していくのはできないであろう。各条項の一字一句をそのまま永久に踏襲していかねばならないということはない。改正すべき点があれば改正を考えるのもよかろう」と書いている。

 あの頃は朝日も正気だった。しかし70年たって歳をとったせいか、すっかり呆けてしまった。もはやボケの言うことなど聴く必要はない。目の前に迫った危機に対して、いま本物の憲法制定をめざすときがきた。

(小言航兵衛、2016.5.23)

     

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