<NBAA>

ホンダジェットとエアロスクラフト

 

 一昨夕アメリカから帰着しました。最後の2日間はアトランタの米国ビジネス航空ショー(NBAA)の会場を走り回り、アトランタから東京までの直行便で14時間、いささかくたびれました。それに時差が重なって、昨日は睡眠不足の重い頭をかかえたまま何もする気が起こらず、終日留守中の古新聞を読んで過ごしました。

 その古新聞の中に、前の首相がすっかりやつれた顔で、お詫びの記者会見をした記事がありました。まことに情けないことです。政治家とは思えない御仁が首相になったのは間違いでしたが、選んだ方も悪くて、要するに衆愚政治の典型ともいうべき現象でした。選んだのは自民党員ですが、彼らにそうさせたのは世論ですから、つまり日本国民という衆愚が選んだことになります。言い換えれば人気投票によって女々しい首相を選んだわけで、これでは全うな政治ができるわけがない。

 プラトンの政治学は2000年以上も前から、民主主義は衆愚政治に陥りやすいと教えております。まさしくその通りで、教科書通りの現象でした。その現象を生み出したのは、あえていうならば、小母さんたちの「三高嗜好」――家柄や教育が高く、財産や収入が高く、背や鼻が高い人物へのあこがれにほかならず、それを政治家たちが利用した結果でした。そういえば前にも、肥後の殿様の末裔だったか、大衆の愚かさを利用した政治家にかつがれて首相になり、同じように政権を放り出した人がおりましたっけ。

 どちらも小母さん好みの三高にかなっており、女が政治に口を出すようになると、こういうことが起こるわけです。婦人参政権をなくせとまでは言いませんが、せめて先般来実証されたように、外務大臣や防衛大臣には任命すべきでないでしょう。外に向かって戦うのは『女の平和』に描かれた古代ギリシアの昔から男の役目と決まっております。

 閑話が過ぎましたが、今回の第60回NBAAコンベンションは9月26〜28日の3日間にわたって開催され、1,000社を超える企業や団体が参加し、100機以上のビジネス機を展示、観客は3万人以上だったそうです。 

 私の最も注目したのはホンダジェットでしたが、アメリカ法人ホンダ・エアクラフト社の藤野道格(みちまさ)社長が記者会見して、現状と今後の予定について発表しました。


ホンダジェットの展示場で記者会見する藤野社長

 およその現状は、原型機の試験飛行が300時間に達したとのこと。2009年初めには量産型が飛び初め、2010年第2四半期に型式証明を取る予定。1機当りの価格は365万ドルで、100機以上の注文を受けている。

 ホンダジェットはGEホンダHF120エンジン2基を装備、高度30,000〜43,000フィートを770km/hの速度で巡航し、2,180kmの航続性能を持つ。機内は7人乗り。


NBAAショー屋外展示会場
アトランタ郊外のフルトン・カウンティ空港に展示されたホンダジェット 

 もうひとつ、筆者が面白いと思ったのは、米エアロス社の「エアロスクラフト」――飛行機と飛行船とホバークラフトを一体とした新しい概念の航空機で、巨大な水すましのような形をしている。これがリフティング・ボディになっていて、中にはヘリウムガスが入る。機体下面には沢山のノズルが輪を描いて並び、そこから圧縮空気を噴出してエアクッションをつくる。そのため不整地でも水面でも、どこでも発着可能というもの。

 当面の設計仕様は30人乗りの機体で、2010〜11年の初飛行をめざすという。もっとも、その記者会見には、余りに先端的な概念で「どうせものになるまい」と思われたのか、100席ほどの会見場に10人くらいの記者たちがパラパラと坐っている程度。是非ともものにして、記者会見をサボった連中の鼻をあかして貰いたいと思います。


特異な形状を持つアエロスクラフト
腹の下に並ぶのが噴射ノズル

 これらの詳しい話は、10月下旬発売の月刊誌『航空ファン』に書く予定です。

(西川 渉、2007.9.30) 

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