航空の現代電脳篇 → ホームページ作法(6)

ホームページ10か条

 

 

 8月14日、本頁にアクセス・カウンターを置いてから丁度50日目でカウント数2,000回になった。1か月1,000回という当初の目標に対して、やや早いペースで経過している。この調子でゆけば1年間で14,600回になるのではないかなどと皮算用をしているところである。

 しかし、捕らぬ狸の皮を勘定するものではない。ここでは、もう一度ホームページ作法について考えてみることとしたい。

 考え方の根拠は『ソニーの法則』(片山修著、小学館文庫)に見られる大曽根幸三副社長の「開発18か条」である。この人は大ヒット商品のウォークマンの開発に携わった実績があり、商品開発の手法についても大いに注目されている。その原則を、ここではソニー製品の開発ではなくて、ホームページの作法に応用してみようというのである。

 法則は全部で18か条だが、その中から10か条をいただくことにした。結果は以下の通りである。

1 客の欲しがっているものではなく、客のためになるものをつくれ

 ホームページやネットサーフィンというのは元来、大した娯楽にはならない。コンピューター・ゲームやチャットなどは時の経つのを忘れて、はまりこんでしまうともいうが、ネットサーフィンなどはしばらく続けると飽きてくる。

 したがって、ホームページというのは、もともと読者の欲しがるようなものをつくる方が無理なのである。ごく月並みなことではあるが、情報の提供といった方針に徹する方がいいのではないか。

 ときどき悪ふざけの過ぎた、ひとりよがりのホームページを見かけることがある。どんなものを作ろうと、それはまさしくインターネット本来の自由というものだが、それだけで終わっていては訪問者も減るのではないか。やはり、どこかに心棒のようなものが通っていなければなるまい。

 

2 よいものを安くより、新しいものを早く

 この法則に前項の原則を合わせて考えるならば、新しい情報を早く提供することが肝要ということであろう。まさに、新聞社のホームページに桁違いのアクセスがあるのはそのためである。それに対して、手づくりの個人ホームページが太刀打ちできるはずはないが、しかし多くの人が気付かずに見過ごしているような情報をつかみ出して世に示すことは、やはり意義のあることだろう。

 

3 客の目線ではなく,自分の目線でモノをつくれ

 市場の要求する商品をつくれというのは常識だが、あえてその逆を求めるのは個性や独創性を出せということであろう。何ごとによらず、独創性のないものは詰まらぬし、ホームページだってなかなか見てはもらえぬ。

 見る人に「へえ、そんな見方があったのか」と思わせるような独創性が必要というわけだが、しかし言うべくしてなかなかそうはいかない。近頃の傑作は、自民党の総裁選に際して、田中真紀子が3人の候補者を「凡人、軍人、変人」と一括し、一喝してみせたことだった。

 

4 サイズやコスト目標は可能性で決めるな。必要性、必然性で決めろ

 ホームページの分量の問題は、しばしば論じられる。余り長すぎると嫌われるというのが通常の考え方で、そのことはよく承知しているが、ものによってはそうはいかないものもある。

 冗長に流されるのは、文章でも電話でもおしゃべりでも戒めなければならない。報告書の作成にあたって、資料らしきものは玉石混淆、何でもかんでも綴じこんだものを見ることがあって、むかし堺屋太一はこうした無駄の多い報告書づくりを「港区方式」といって嗤ってみせた。確かに、そういう分量の多いものに限って何をいいたいのか、わけの分からぬものが多い。

 だが、ここでは、あえて逆の発想を求めているのだ。必要なものは、いかに膨大であろうと必要なのである。特に政府機関のサイトに見られる報告書や白書や官報や議事録などは、要点だけにとどまっているけれども、本当は全文をかかげるべきであろう。

 全文を出すのは分量が多くなり過ぎてインターネット閲覧者に負担をかけると思っているのか、政府刊行物センターの印刷物の売れ行きが落ちるのを心配するからか、あるいは自ら冗長を認めているからか。

 米政府のサイトを見ていると何百頁もの報告書や計画書が遠慮なしに掲載されている。それがアクロバットなどに圧縮されていたりして、うっかり引き出そうものなら膨大な文書になってしまう。しかし、そういう情報の発信や入手が簡単にできることがインターネットの素晴らしい利用価値なのだ。

 

5 市場は成熟しているかもしれないが、商品は成熟などしていない

 逆にインターネットの世界は未熟である。しかし未熟だからといって個々のホームページも未熟でいいということにはならない。

 商品を未熟のままで売り出しても結局は売れない。同じようにホームページも、未熟なままで成長がなければ、やがて飽きられるであろう。

 

6 絞った知恵の量だけ、付加価値が得られる

 これはもう当然のことである。その智恵が、絞っても絞ってもなかなか出てこないところが悩みだが、それでも絞らねばならない。ない智恵を絞るのは、しかし、なかなかに心楽しく心地よいことでもある。

 

7 ものが売れないのは、高いか悪いかのどちらかだ

 つまり、本頁が見て貰えないとすれば、画面が重くて表示に時間がかかりすぎたり、せっかくアクセスしても内容が詰まらなかったりするからであろう。せっかく訪問してくれた読者を落胆させてはならない。軽くて役に立ち、いささかのユーモアがあって面白いといった頁をめざしたいと思う。

 

8 他社の動きを気にし始めるのは、負けの始まりだ

 ほかのホームページを見て、なんであんなくだらぬものに沢山のアクセスがあるのかなどということを気にしたり、嫉妬してはならない。信念をもって、わが道を行けということであろう。

 

9 市場は調査するものではなく、創造するものだ。世界初の商品を出すのに、調査のしようがないし、調査しても当てにはならない

 どのようなホームページがヒットするのか。どのくらい見て貰えるのか。しばらく前は、この種の議論が多くて、『スレート』誌、『ウォールストリート・ジャーナル』紙、『ビジネス・ウィーク』誌などが無料で紙面を公開し、やがて有償に切り換えていった。

 つまり無料で公開することによって市場の反応を調査したのであろう。その結果、有料に切り換えることによって、調査で得られた思惑通りの読者がついてきたかどうか。おそらくは余り当たらなかったのではないだろうか。

 

10 商品の弱点を解決すると新しい市場が生まれ、利点を改良すると今ある市場が広がる

 どうも本頁は弱点ばかりで、デザインはスッキリしないし、全体の統一が取れていないし、ひとりよがりの雑言が多いし、年寄りじみた昔話も多く、まことに困ったものである。そうした弱点を如何にして解決するか、どうすればこれからも多くの人にアクセスして貰えるような頁をつくることができるか。それが今後の私の課題である。

 (西川渉、98.8.16)

 「電脳篇」目次へ戻る) (表紙へ戻る