航空の現代電脳篇→ホームページ作法(4)

友人への回答――1行文字数

 仙台に住む旧友が、この拙い本頁を見てくれているらしく、ときどきメールで感想やら注意やらを送ってくれる。その中で昨日のメールは、本頁について「1行54文字、画面一杯の文字配列は長すぎて少々疲れを覚える」という趣旨であった。1行の文字数を減らして、画面の左右をもっとあけたらどうかという忠告である。

 この問題は、しかし、ホームページの作者ばかりでなく、読者の側にも関連する。読者が自分の使っているブラウザの窓枠の幅を小さくすれば、1行あたりの文字数はいくらでも少なくできる。そんなことは百も承知という方は、ここから先は無駄な時間になるおそれがあるから、お読みいただく必要はないであろう。そのことを予めお断りしておいて、わが友だちのために先へ進みたい。

   HTMLでつくったホームページのレイアウトは、どちらかといえば作者よりも読者の手にかかっている。このことは少なくともホームページの作者ならば殆どの人が知っているはずで、表示される画面の大きさや形によって融通無碍に変化する。したがって、ホームページをつくるときに余りレイアウトにこだわっても無駄になるとは、教科書の最初のほうに書いてあることだ。

 私の友人の画面が1行54文字も表示しているのは、よほど大きなCRTを使っているか、よほど小さな文字で表示しているからであろう。私のCRTは17インチだが、文字が大きいので左右の窓枠を一杯にしても1行35〜40字を表示するのが精一杯である。

 そこで、1行当たりの文字数を減らすには、一つはフォントを大きくすればよい。文字が大きくなった分だけ1行当たりの文字数は減るであろう。

 もう一つは窓枠を画面一杯に広げずに、左右の幅を縮めればよい。そうすると、窓枠の大きさに合わせて文が改行されるから、1行当たりの文字数は自分の好きなように調節することができる。

 ただし、同じ画面の中に横幅の大きな画像がはめこまれていると、窓枠を小さくしても画像は小さくならず、したがってテキストもそれにつられて改行されないから、一部は枠の外にはみ出して読みにくくなる。本頁では、なるべくそういうことがないように、大きな画像や長すぎる横罫などは使わないようにしている。

 

  以上で友人への返事は終わったようなものだが、読者にばかりゲタをあずけるのはおかしいといわれるかもしれない。そこで、作者の側で1行の文字数を調節するにはどうするか。素人の乏しい知識からすれば、フレームを使ったり、表(テーブル)の中にテキストを押しこんだり、本や雑誌の固定的な紙面をそのまま取りこめる Adobe Acrobat などの方法が考えられる。

 Acrobat Reader は、これを使うとアメリカの何百頁ものレポートを印刷した原本と同じ状態で手に入れることもできる。私は、これが気に入っていて、いろんな報告書を取りこんでは大量にプリントするので、インクや紙が要るばかりでなく、部屋の中に読みもしないレポートが紙屑の山になって困り果てている。

 アクロバットはさておき、ここでは表を使って文字数を調節する初歩的な実験をしてみたい。まず次のような文章があったとする。

「FAAは、これまで空港への計器進入に使われてきたADFやDMEの代わりに、GPSの使用を承認した。この動きについて、自家用操縦士協会(AOPA)は、これからはADFやDMEがなくても、GPSさえあれば計器飛行が可能となり、大きな経費の節約になるとしている。FAAはこの決定を7月16日付けのNOTAMで公式に発表する予定である。」

 これは7月13日頃の報道記事で、無闇に略記号が出てくるが、航空人にとっては下手に日本語にしない方が分かりやすいはずである。ただし、ここでは私の友人を含めて、航空人以外の人にも見ていただいているのではないかと思い、略号の内容をちょっと説明しておきたい。

 FAA:Federal Aviation Administration(米連邦航空局)
 ADF:Automatic Direction Finder(自動方向探知器)
 DME:Distance Measuring Equipment(距離測定電波装置)
 GPS:Global Positioning System(全地球的測位システム)
 NOTAM:Notice to Airman(ノータム=航空安全通報)

 さて、上の文章について、1行当たりの字数を調節するために小さな表の中にはめこんでみる。結果は次のようになる。

 FAAは、これまで空港への計器進入に使われてきたADFやDMEの代わりに、GPSの使用を承認した。この動きについて、自家用操縦士協会(AOPA)は、これからはADFやDMEがなくても、GPSさえあれば計器飛行が可能となり、大きな経費の節約になるとしている。FAAはこの決定を7月16日付けのNOTAMで公式に発表する予定である。

 

 しかし、このままでは表の枠が見えていてわずらわしい。そこで、枠の線の幅をゼロにすると、次のように表の線が消える。

 FAAは、これまで空港への計器進入に使われてきたADFやDMEの代わりに、GPSの使用を承認した。この動きについて、自家用操縦士協会(AOPA)は、これからはADFやDMEがなくても、GPSさえあれば計器飛行が可能となり、大きな経費の節約になるとしている。FAAはこの決定を7月16日付けのNOTAMで公式に発表する予定である。

 このようにしてつくった表の横幅は、いくらでも調節できる。調節の方法は二た通りあって、上の表は読者が見ている窓枠の左右50%の幅で表示されるように設定してある。したがって、ここでも横幅の大きい窓枠で見ると、それにつれて1行の文字数も増加する。

 もうひとつの調節法は表の幅を絶対値で決めるもので、読者の窓枠が大きくても小さくても、常に同じ大きさで表示される。私の知っている中では、産経新聞のオンライン・ニュース画面がこの方法で、わざわざ狭い幅に句切られている。横書きではあるが、読者は新聞紙面を読むように文字数の少ない行を追ってゆくことができる。

 ただし文字の大きさを変えると、文字数も変化する。フォントを変えてみると、そのことが分かるであろう。

  

 FAAは、これまで空港への計器進入に使われてきたADFやDMEの代わりに、GPSの使用を承認した。この動きについて、自家用操縦士協会(AOPA)は、これからはADFやDMEがなくても、GPSさえあれば計器飛行が可能となり、大きな経費の節約になるとしている。FAAはこの決定を7月16日付けのNOTAMで公式に発表する予定である。

 かくてインターネットの画面表示は、基本的には読者の手にゆだねられているといっていいかもしれない。読者はみずから読みやすい画面をつくって読むことができるのである。

(西川渉、98.7.20)

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