<米エアライン>

2年連続で死者なし


航空機火災のシミュレーション

 アメリカのエアラインは、2007年と2008年の2年つづけて死亡事故がなかった。ジェット旅客機の登場いらい初めてのことという。これまでに死者のなかった年は4回だけであった。

 また、この2年間に米エアラインの乗客は15億人であった。ある学者の計算では、米エアラインで死亡する確率は、今の子供が生涯のうちに大統領になれる確率よりも低いという。このようにエアラインの安全性が高い国は、カナダ、日本、そしてヨーロッパの一部の国にすぎない。

 こうした安全性の向上は、もとより偶然の結果ではない。アメリカの場合はここ数年間、関係者が努力してきた結果が実ったものと評価されている。たとえばNTSBによれば、過去10年間にエアラインの事故で死亡した人は、乗客10万人のうち68人であった。これは1990年代の半分である。また2002年からの集計では、10万人中19人で、90年代の14%にすぎない。

 だが油断は禁物。つい12月20日にも、デンバーでコンチネンタル航空の旅客機が大事故を起こしたばかりである。同機は離陸しようとして滑走路から外れ、燃料系統が破損して発火、機体右側が炎に包まれた。しかし乗っていた115人は全員が脱出、5人が重傷、38人が軽傷を負ったものの、死者は出なかった。

 今後は小さな異常にも細心の注意を払い、ひとつひとつつぶしてゆくような努力が必要だろう。

 なお、日本のエアラインは、これまで10年以上にわたって死亡事故を起こしていない。台湾のエアラインなど外国機が日本に飛んできて死亡事故になった例はあるが、ここでは日本のエアラインだけの話をしている。したがってアメリカの2年続きなど大したことではないといいたいところだが、飛んでいる便数がちがうので一概に比較することはできない。飛行便数や飛行時間あたりの事故率を見てみる必要がある。

 ただ、日本の事故一覧を見てゆくと、飛行中の乱気流によって機内でけが人を出す重大インシデントが意外に多い。日本の上空に気流の乱れが多いのか、地球上どこでも同じなのかよく分からないが、ジェット気流が通っているせいかもしれない。いずれにせよ乗客としては、飛行機に乗ったならば安全ベルトを締めて、座席にすわって、念仏でもとなえているのがよかろうと思う。

(西川 渉、2009.1.16)

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