<ファーンボロ2008>

激しい受注競争

 

 ファーンボロ航空ショーは今週初め、開幕と同時に激しい受注競争が演じられた。それも中東産油国からの注文が多く、世界の航空界がオイル・マネーの前にひれ伏したかのように見える。

 ショーの初日には中東諸国のエアラインがエアバスとボーイングを合わせて150機発注した。このうち最も大きな発注はアブダビのエチアド航空によるエアバス55機、ボーイング45機、合わせて100機の大量注文。エアバス機の内訳はA380が10機、A350が25機、A320が20機。またボーイングは787が35機、777-300ERが10機であった。

 さらに格安エアラインのフライ・ドバイはボーイング737-800を54機発注した。同航空は泥灰政府による国営航空会社で、事業はこれらの発注機を受け取る2009年なかばから始める計画という。

 そして老舗のサウジアラビア航空もA330-300を8機発注した。

 ショーの2日目にもエアバス社は、143機の受注を発表した。この中で最も大きいのがこれまた泥灰のリース会社、DAEキャピタル社で、100機を契約した。このうち70機はA320、30機はA350ー900。これでDAEの発注したエアバス機は200機になるが、いずれも2011年以降に引渡される。

 次いでアビエーション・キャピタル・グループも23機を発注、チュニスエアが16機を発注した。チュニスエアの16機には3機のA350ー800が含まれる。

 さらにカタール航空がA321を確定4機、仮2機発注した。これらを合わせるとカタールのA321は14機になる。ほかに同航空はA320を11機、A319を2機保有する。

 大型ジェット旅客機に加えて、リージョナル機への発注も多い。ただし、いずれも産油国ではない。オイル・マネーが豪華な大型機を買いあさるのに対し、それ以外の国はつましく小型リージョナル機を買うといった具合である。

 そのひとつはオーストリアのウィーンに拠点を置く格安航空会社ニキ航空で、エンブラエルERJ-190を5機発注した。フランクフルト、ミュンヘン、チューリッヒなどへの定期運航を行う。座席数は104席。将来は背もたれを薄くして112席にするという。同航空は2003年に発足した。

 メキシコのエアロメヒコも12機のERJ-190を発注した。そして中国の鯤鵬航空(Kun Peng Airlines)も5機のERJ-190を発注した。エンブラエル初の中国への進出である。鯤鵬は昨年9月から運航を開始したばかりの新しい航空会社だが、すでに20路線以上の運航をしている。

 なおブラジルのエンブラエル社は2008年前半で97機を引渡した。2007年同期に対して1.6倍である。97機のうち76%はEMB170/190で、残りはERJ145、レガシー600など。

 ロシアのスホーイ・スーパージェット100(SSJ)もファーンボロ・ショーの2日目、ロシアのアビア・リース社から確定24機、仮16機の注文を受けた。これでSSJの受注数は97機になる。SSJはこのショーの間に受注数を100機以上に伸ばす目標を立てている。

 ファーンボロ航空ショーに先だって、エアバスとボーイングの今年前半の競争の結果は下表のとおりである。両社ともに驚くほどよく似た数字が並んでいる。強いていえばエアバス社がやや上回るものの、金額にすればどうなるか。この表では分からないが、まずは引き分けといった方がいいかもしれない。

 なおエアバスA380は、この6月末の時点で受注総数が191機となり、そのうち4機が引渡しずみであった。またA350の受注数は総計379機に達した。

 一方、ボーイング787は総受注数が896機となっている。うち、この半年間に受けた注文は79機。ボーイング社はファーンボロ航空ショーでも、787は今年第4四半期に初飛行するとしている。

          

エアバス

ボーイング

合   計

受注機数

487

475

962

引渡し機数

245

241

486

受注残

3,663

3,661

7,324

 (西川 渉、2008.7.17)

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