<ヘリコプター>

最良の危機管理手段

 

 緊急事態に対応する手段はさまざまに考えられるが、ヘリコプターは最良の危機管理手段のひとつといってよいであろう。何か緊急事態が生じた場合、ヘリコプターはいつでも、どこでも直ちに現場に飛んでゆき、所要の対応をすることができる。

 危機といえば、最悪の危機が戦争である。その戦争に対応するための航空機、すなわち軍用機は、英フライト・インターナショナル誌(2011年12月13-19日号)によれば、世界中で総数52,033機が使われている。そのうちヘリコプターは下表のとおり18,902機で、実戦に使われる固定翼機の15,746機よりも多く、全体の36%余を占める。

世界の軍用機

機  種

機   数

構成比

備   考

固定翼実戦機

15,746

30.26%

戦闘機、爆撃機、偵察機など

特殊任務機

1,747

3.36%

   

輸送機

5,109

9.82%

空中給油機を含む

ヘリコプター

18,902

36.33%

軍用機に占める割合は最大

訓練機

10,529

20.24%

訓練用ヘリコプターを含む

合  計

52,033

100.00%

   

 さらに、軍用機の総数52,033機の中には訓練機も含まれる。これには固定翼とヘリコプターの両方の訓練機が含まれるが、訓練機はその役割として、危機には直接対応しないものとして削除するならば、総数は下表のとおり41,504機となり、ヘリコプターの比率はさらに上がって45.54%と半分に近くなる。

機  種

機   数

構成比

備    考

固定翼実戦機

15,746

37.94%

戦闘機、爆撃機、偵察機など

特殊任務機

1,747

4.21%

     

輸送機

5,109

12.31%

空中給油機を含む

ヘリコプター

18,902

45.54%

     

合  計

41,504

100.00%

    

 下表は国別の軍用機数とヘリコプターの比率を見たものである。さすがにアメリカの軍用機は世界で最も多く、13,000機に近い。そのうちヘリコプターは37%弱で、ここに掲げた5ヵ国の中では最も低い。注目すべきはドイツで、軍用機は最も少ないけれども、ヘリコプターが半分以上を占め、5ヵ国の中では最も高い。かつて冷戦時代は東側の国境を東欧に接していたため、いつ何時この国境を越えてソ連の戦車が攻め込んでくるかもしれない。それに備えて、多数の攻撃ヘリコプターを備えていたが、その名残りではないかと思われる。

 下表5ヵ国の中では、日本はアメリカに次いで軍用機が多く、ヘリコプターの比率も比較的高い。大陸諸国が海を越えて攻め込んでくると考えてのことかどうか、日本政府または防衛省は基本戦略を明確にして貰いたいところだが、少なくとも日本近海を遊弋する中国の潜水艦を警戒する必要はある。さらに漁船に扮して領海を侵犯してくる中国や北朝鮮の不審船を追い払う必要もあろう。

   

固定翼実戦機

訓練機

ヘリコプター

合  計

ヘリコプター比率

アメリカ

5,415

2,730

4,767

12,912

36.92%

イギリス

265

383

426

1,074

39.66%

フランス

570

284

544

1,398

38.91%

ドイツ

344

124

522

990

52.73%

日本

553

423

727

1,703

42.69%
〔注〕アメリカのヘリコプター数の中にはV-22オスプレイ・ティルトローター144機を含む。

 危機管理のために、ヘリコプターが如何に重要であるか。上の数字からも分かろうというものだが、意外に多くのヘリコプターが使われている軍用面ばかりでなく、民間分野においてもその能力は充分に活用してゆかねばならない。

(西川 渉、2012.1.21) 


S-70/SH/UH-60は世界で最も多く、2,722機が使われている

 

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