<小言航兵衛>

ばいばいブッシュ

 日本には藪医者という言葉があるが、アメリカではあやしげな大統領を藪(ブッシュ)というらしい。

 そのあやしさの第一は、2000年の大統領選挙でも最後の勝敗を分けるフロリダ州の開票で、事実上アル・ゴアに50万票の大差で負けていながら、何のかんのと文句をつけて落選を認めず、州知事の弟とかたらって強引に票数の数え直しに持ち込み、わずか数百票の差で勝ったことにしてしまった。

 そして就任8ヵ月後、米国民がそろそろ疑惑の目をもち始めた頃、まことに都合良くというか、仕組んだ通りかもしれぬが、911多発テロが起こってくれた。これを口実に、アフガニスタンを侵攻して天然ガス・パイプラインを奪取し、イラクを占拠して世界第2の石油資源を抑えこんだ。みずからも石油族の一員として、石油利権の確保が狙いだったのである。

 これらのやり口が余りにも悪どいために、米国内のみならず世界中の顰蹙(ひんしゅく)を買うようになり、2008年12月バグダッドを訪問したときは、記者会見の最中、靴を投げつけられてアラブ世界最大の侮蔑を浴びた。

 この一件だけでも、この男のアラブ戦略が間違いであり、中東諸国で如何に嫌われているかが分かろうというもの。日本でも、国民に嫌われたり軽蔑された首相や政治家は多いが、下駄をぶつけられた例はまだない。


「援軍オバマはいつ来るのかな」

 

 藪大統領が嫌われているのはイスラム世界だけではない。米国民の反感も日がたつにつれて大きくなり、最近の支持率は2割を切るようになった。ウォーターゲート事件の疑惑を買ったニクソンをも下回るという。

 自分では「なに、大統領としての評価は歴史が下すさ」などと聞いたような口をたたいているが、歴史家の間ではすでに歴代最低の大統領との見方も出ている。

 最近の世界的な金融危機も、藪政権の誤りに発するもので、8年間の経済政策が実態のないバブルをふくらませ、バブルをはじけさせたのである。

 その影響は、今や世界中に及び、大恐慌となってあらゆる経済活動を無意味なものにしてしまった。


ブッシュの業績

 いよいよホワイトハウス最後の日を迎えたが、その退出を惜しむ声はどこからも聞こえてこない。藪は米国史上最悪の大統領として、ホワイトハウスを出てゆくことになる。

 この8年間、政治的には世界中の反対を押し切って、アフガンとイラクの2つの戦争で何千人もの犠牲者を出しながら、泥沼から抜け出せないままであった。経済的にも世界中を最悪の事態に投げこんでしまった。

 かくて、この男、第2次大戦以来、国際的に高く評価されてきたアメリカの威信を、完全にぶち壊してしまったのである。


「お先に失礼」

 もっとも、これは他国の話であって、日本の大統領ではない。新大統領の就任についても、日本のテレビなどはアメリカ人同様にはしゃいでいるが、この人物が日本にとって吉とでるか凶と出るかは分からない。

 外交担当にはヒラリーをもってきたようだが、その亭主は昔ホワイトハウスから、親中をもって日本を痛めつづけた。女房が亭主と同じやり方をするとは限らぬが、警戒だけは怠らぬ方が良いであろう。

 ともかくも今日は「ばいばいブッシュ」といっておこう。


何もかもぶち壊して去る

(小言航兵衛、2009.1.20)

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