<小言航兵衛>

社民ごときにかかずらうな

 民主党政権が実現することになって、八ッ場ダムの建設をつづけるか否かが大きな問題となっている。新政権は無駄といい、従来からの関係者はつづけるべきだと主張し、東京都知事は何百億円の費用返還を求めるといきまいている。

 先日は、陸上自衛隊の次期攻撃ヘリコプターAH-64Dの生産打ち切りに対して、メーカーがライセンス料の補償を求める文書を防衛省に送ったという。AH-64Dは現用AH-1Sの後継機として2001年62機の導入が決まったが、調達価額が年々上昇し、高くなりすぎるというので10機だけの生産で打ち切られることになった。

 そのため富士重工は、米ボーイング社に支払った62機分のライセンス料が回収できなくなったとして、防衛省に対し約500億円の支払いを求め、場合によっては民事訴訟を起こす構えとか。

 小さな計画なら「しまった」といって途中で止めることも容易だろうが、ダムや高速道路や軍用機調達などの大規模プロジェクトは、よほど幅の広い、しっかりした考えをめぐらした上でないと、あとから修正するのはむずかしい。もとより、そうした考えをめぐらすのは発注者の方だから、上の例は、いずれも政府の方に責任があるように見える。

 実際、ダムのことは知らぬが、世界最新鋭の攻撃ヘリコプターを選定し大量に調達するのに、いかなる防衛政策、いかなる国防戦略、いかなる戦闘戦術を考えて、これを決めたのか。防衛省幹部のずさんな仕事ぶりと空洞のような頭の中が想像される。

 もっとも途中で金額が増えた理由は何か。発注者の要求仕様が変わったのか、工事会社やメーカーの方に別の原因が生じたのか、あるいは外部の経済情勢の変化が物価の上昇をもたらしたのか。

 ともかく大プロジェクトの中止は影響が大きく、問題も大きくなることはいうまでもない。

 アメリカでは、今年オバマ政権に変わって、軍の調達計画に変化が見えてきた。大統領専用ヘリコプターVH-71の調達打ち切りは、その象徴で、新大統領の決意のほどを見せたものであろう。

 しかし、これもメーカーや直接担当の海兵隊当局は黙ってしたがおうとせず、製造着手ずみの5機はとにかく完成させるとしている。

 F-22ラプター戦闘機も、新政権は冷戦が終わった今日、そんなものは必要ないとしている。しかし米空軍は、この計画のために20年前の設計研究の段階から700億ドル(約7兆円)を費やしており、オバマ政権の云う187機で終わるのはもったいないと主張する。

 それに日本からもF-22を買いたいという申し入れがきている。せっかくだから、売ってはどうかという意見も多い。

 しかし、こうした最新鋭の戦闘機を外国に売り渡すのは1998年の法律によって禁じられている。そうなると、わずかな生産数では空軍向け1機あたりの単価も高くならざるを得ない。しかし、だからといって軍事的な機密を国外に出すわけにもゆかない。

 そこで重要機密は、ほかのものに置き換えて売ればよいということになるが、そうするとF-22本来の機能が薄れる。それでも日本は、そのための改修費を含めて支払いに応じるだろう、とはアメリカ側のムシのいい見方で、日本もなめられているような気がするが、とにかくアメリカではそう報じられている。

 同じ報道によると、日本が買いたいとしている機数は40機だそうである。その売値がおよそ100億ドル(約1兆円)とすれば、アメリカ政府の経費負担がそれだけ軽減され、数万人の雇用が2017年まで確保できるというのがアメリカ側の皮算用。

 軍事的にも、日米がF-22という共通機種を使えば、共同作戦もやりやすくなるし、アメリカ軍の極東派遣部隊を減らすことも可能になる。そうなって初めてF-22の調達数も少なくてよいといえるはず。

 さらに、日本がF-22を保有すれば北朝鮮のミサイル基地も攻撃可能となるから、かのならずもの国家に核弾頭の開発をあきらめさせることにもなろう。

 以上F-22の話はアメリカの昨今の論調だが、日本では民主党の国家防衛策がどこへ向かうのか。連立政権などといって社民党にひきずられているようだが、早いとこ放り出すべきである。

 国民の大多数は民主党を選んだのである。北朝鮮の走狗か金正日の手先みたいな社民党などは、国民のほとんどが相手にしなかったのだ。にもかかわらず、これに手こずっているのはおかしい。選挙で示された民意に反するのではないか。

 参議院の民主党議席が過半数でなくてもいいではないか。いずれ来年の参議院選挙で勝つつもりだろうから、しばらくはねじれたままで頑張るべきだ。

 時代錯誤のアナクロニズムを奉ずる社民党ごときにかかずらう余り、国家の大計を誤ってはならない。連立のための話し合いは、国民新党との合意だけで、あとは遠慮なく打ち切るべきである。

(小言航兵衛、2009.9.9)

表紙へ戻る