<小言航兵衛>

死刑執行

 先日2人の凶悪犯が死刑を執行されたらしい。執行命令書に署名したのは、これまで死刑反対論をとなえてきた千葉なにがしという法務大臣だそうである。

 この女は夫婦別姓や外国人参政権を推進し、不法滞在の韓国人を保護するなど、日本の家庭、社会、国家を破滅させるような政治活動を続けてきた仮面の元代議士で、日本人拉致の実行犯を含む北朝鮮スパイの釈放や、ありもしない従軍慰安婦への賠償を主張するなど、金正日の手先としか思えないような人間である。

 こうしたことから先の参院選で落選したのは当然としても、そのまま大臣の椅子にすわりつづけるという厚顔の持ち主にほかならない。

 こんな国家反逆罪にも問われそうな女を、よくもまあ日本国の法律の番人にしたものだが、任命者の鳩山と、それを引き継いだうえに落選後も続けさせている菅と、2人の民主党総理の識見を疑わざるをえない。この両名もまた日本国の滅亡をねらっているのではないかと思われるほどである。

 おまけに、この女、わざわざ死刑執行に立ち会ったというのだから、その神経が分からない。というより、目的は何だったのか。マスコミも真意をはかりかねたのか、的確な解釈はどこにも見あたらない。おまけに死刑になった人の氏名や犯罪の詳細を公表し、近く刑場も公開するという。

 選挙に落ちてやけになったらしいという人もいたが、航兵衛の解釈は、狂的なサディズムである。その快感に酔って、味を覚えたからには今後も何回か、辞任するまでに同じことを繰り返すのではなかろうか。


「最後の一服どうかね?」
「結構です。タバコは体に悪いといいますから」

  

 いつぞや、4〜5年前であったか、学校の同窓会で最高裁の判事という人物と話をする機会があった。学年でいえば何年か下の後輩にあたるが、航兵衛の観ずるところ近頃は裁判所の判決が甘すぎるのではないか。殺人事件が増えているというのに、死刑の判決は逆に減っているように思うがと問いかけたところ、判事ドノは「死刑の制度は世界的に減る傾向にある」として、ヨーロッパ先進国は死刑制度などはないと云いながら、まるで野蛮人でも見るような目つきでこちらを見返してきた。

 しかし話は逆で、制度があるから死刑にするのではなく、凶悪な人殺しだからこそ死によって罪をつぐなってもらうのである。軽い罪でも死刑にせよというのではない。無論なかには何かのはずみで逆上し、人を殺すに至った。あとから冷静になって深く反省しておりますなどという犯罪者もいるだろう。

 けれどもオウム狂団のように、冷静な頭で残虐な殺人計画を練り上げ、実行に及んだ連中もいる。彼らの裁判はほとんど終わったのではないかと思うが、処刑されたのかどうか。すでに公表されぬまま終わっているのかもしれぬが、原則は判決から半年以内に処刑することになっているはずである。

 

 最高裁の判事によれば、上述のように死刑の執行は野蛮国の制度らしい。では、どういう国がそれに当たるのか。今週の英エコノミスト誌が各国の死刑執行のもようを数字で報じている。

 それによると、中国は世界のどの国よりも飛び抜けて多い。のみならず、その数は年間千人を超え、中国を除く全世界の執行総数を一国だけで上回っている。ただし実際の処刑数は国家機密になっていて、正確な数字は分からない。

 今や、死刑制度を廃止した国は世界の3分の2以上となり、2009年現在、制度を残しているのは58ヵ国。それも、ほとんどの国が実行していない。実行している国の死刑執行数は、主なところで下表のとおりという。

2009年死刑執行数

日本

7

シリア

8+

ベトナム

9+

スーダン

9+

イエメン

30+

米国

52

サウジアラビア

69+

イラク

120+

イラン

388+

中国

1000++
[資料]アムネスティ・インターナショナル

 このほかにもエジプト、リビア、バングラデシュ、タイ、ボツワナ、シンガポール、北朝鮮、マレーシアなどがあるが、いずれも日本より少ない。したがって、中国を除けば、世界の死刑執行数は総計700人をやや上回る程度になると見られる。

 こうして見ると確かに、最高裁の判事がいうように野蛮国が並んでいるといえなくもない。数字だけでいうならば、最も野蛮な国が中国であり、次いでイラン、イラク、サウジアラビア、アメリカということになる。

 そういえば昔、1980年代のなかば頃だったか、天津の町の中を走っていたとき、向こうから大勢の男たちを荷台に立たせたトラックが走ってきた。よく見ると全員が後ろ手に縛られている。こちらの車の運転手が、あれは死刑囚だと説明してくれた。江戸時代の日本でも市中引き回しのうえ処刑というようなことがおこなわれたようだが、それと同じことだったのかもしれない。


「ヨーイ、撃て!」

 さてそこで、死刑は野蛮だとか処刑は残酷だというのであれば、航兵衛としてひとつの提案をしておきたい。すなわち、死刑制度をなくして、その代わりに自死の判決をくだすのである。つまり執行人が手をくだすことなく、自分で死んでもらうのだ。

 わが国には昔から切腹の習慣があり、それは名誉とされてきた。その名誉を与えられるのだから、犯罪者も喜び、従容として死につくであろう。

 ハラキリは痛いから厭だという奴には猫いらずでもトリカブトでも青酸カリでも、囚人の好む薬を与えるのもよい。これで日本も死刑制度がなくなって、最高裁や死刑反対論者のいう野蛮国から脱け出せるというものである。

(小言航兵衛、2010.8.2)

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