<小言航兵衛>

ノーベル賞

 このほど日本の化学者お2人がノーベル賞を受けることになったよし。まことに喜ばしい限りで、普段は憤慨だらけの航兵衛も、今日ばかりは祝意を表したい。

 テレビ・ニュースの画面では、学校帰りの小学生らしい小さな女の子が「なんだか日本を取り戻すことができたような気がします」と云ったのには余りにみごとな言い回しで、その大人っぽさに驚く余り、吹き出してしまった。たしかに政府のやることは行き当たりばったり。中国からは小バカにされるばかりで、われわれの気持ちは妙にうつろになっていたところである。

 ところが、女の子の直後に登場したカン首相が「これで、子供たちが将来に夢を持てるよう期待したい」などと語ったが、小学生にも劣る凡庸なコメントで、子供たちの夢を壊してきた張本人が今さら何をいうかと、やっぱり腹立たしい虚脱感に落ちこんだ。

 それから何日かたって、今度はノーベル平和賞が中国人の反体制活動家に与えられることが発表された。中国政府からすれば、いわゆる政治犯で、牢獄に幽閉しているところへ、寝た子を起こすようなことになり、共産党による人権無視の独裁体制が世界中に知れわたってしまった。

 中国政府としては痛いところを突かれたらしく、ノーベル賞受賞の新聞報道を禁止するばかりか、日本を初めとする世界各国からのテレビ電波も遮断して、このニュースが始まるとテレビ画面が真っ黒になったらしい。航兵衛もしばらく前、北京のホテルで日本のテレビ・ニュースを見ていたから、よく分かるような気がする。世界中のテレビを監視していて、気に入らぬニュースが始まった途端に電波を遮断しなければならぬとは、一体どうやるのか知らぬが、係員はさぞかし忙しいことであろう。

 この平和賞の授与に対して、中国政府は内政干渉とか国交断絶などと吠え立てるが、授賞を決めたノルウェー政府は「世界平和には人権の尊重が不可欠」、「中国は大国として批判を受ける責任がある」と、堂々たる反論をしている。中国朝貢国の日本政府にはとうてい言えぬことであろう。

 朝貢といえば、いつぞやオザワ何樫が民主党の愚かな議員144人を引き連れて中国へ行き、国家主席の前にひざまづかせて服属の儀式を演じてきた。その一方で、天皇陛下に対しては無礼を働くなど、法律には触れなくとも、日本人としての誇り、国会議員としての理念は那辺にあるのか。

 その国賊オザワに対して、カン政権の腰抜けぶりは、離党も辞職も言い出せないテイタラク。法律に照らして「推定無罪」などと知ったような論議がまかり通っているが、それならば道義上の存念だけでも国会で問いただすべきである。


ノーベル賞の絢爛たる授賞式

 またしても腹立たしい話になったが、同じノーベル賞でもイグ・ノーベル賞の話で口直しをしておきたい。この賞については『笑う科学――イグ・ノーベル賞』(志村幸雄著、PHP新書、2009年11月4日刊)に詳しい。それによるとイグ・ノーベル賞とは「まず人を笑わせ、そして考えさせる」(first make people laugh, and then make them think.)研究に対して授与されるもので、日本からの受賞には世界の夜を変えた「カラオケ」や、「人間とイヌの平和的な対話を促進」して平和賞を与えられた犬語翻訳機「バウリンガル」などがある。

 また、この本には出てこないが、2008年秋に発表されたイグ・ノーベル生物学賞は、フランスの獣医学者3人の研究で、イヌに付いているノミの方がネコのノミよりも平均20センチ遠くへ飛ぶことを証明したものとか。

 そして今年の受賞は、鯨が吹き上げる潮の中に含まれる微生物の研究であった。その方法はリモコンのヘリコプターを鯨の頭上に飛ばし、その下に吊り下げたシャレーで潮吹きを受け止め、皿の中にたまった鼻汁を顕微鏡で調べるというもの。

 また経済学賞はゴールドマン・サックス、AIG、リーマン・ブラザーズ、メリル・リンチなどの会長、社長、役員一同に対し、新しい投資法を開発し、あおり立て、世界的なバブルを創出したあげく、自分たちだけは莫大な利益を懐(ふところ)にして遁走した功績によるというものだった。

 さらに化学賞は、メキシコ湾の海底で原油を噴出させ、水と油は混じらないという昔からの迷信を一気にひっくり返した功績で、BP石油会社に授与された。


バウリンガル
この次は猫語翻訳機ミャウリンガル
の研究と開発も進んでいるらしい。

 そこで航兵衛としては、いくらお酒を飲んでも正気を失うことのない研究により、「ぐい呑ーめる賞」をいただきたいと思って、連日その実験にいそしんでいるところである。

(小言航兵衛、2010.10.11)

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